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9-1-1 低線量被ばくに関する1970年代の見解

1976年アメリカ議会の低線量被ばく問題セミナーで、現行の放射線被の基準で被ばくする場合の健康被害について、BEIR(イオン化放射線の生体影響に関する諮問委員会)レポートの分析が引用されています。BEIR委員会の見解とは何だったのか、2010年代の日本と比べてどうなのかを考える上で、わかりやすい解説を紹介します。

低線量被ばくに関する1970年代の見解

 9—1の議論の中で言及されているアメリカ国立科学アカデミーのBEIR(イオン化放射線の生体影響に関する諮問委員会)の放射線被害に関する見解について、1979年に医学誌CA(アメリカがん協会)に掲載されたインタビュー記事(注1) [1]が素人市民にはわかりやすいので、以下に翻訳紹介する。なお、CAという医学誌は2011年時点で「全ジャーナル中インパクト・ファクター第1位の医学誌」(注2) [1]とされている。その理由は「がんに関する統計や診療ガイドラインなど公式性の高いもの」であり、高い確率で引用されるからだという。

「インタビュー―低線量放射線—」

 アーサー C・アプトン(医学博士):国立がん研究所所長
 聞き手:CA編集者

編集者(以下E):スリーマイル・アイランドの出来事で世間の注目が低線量放射線に集まりましたが、この放射線はどう定義されるのですか?

アプトン博士(以下U):ほとんどの科学者が同意すると思いますが、低線量放射線というのは、職業被ばくで許容されている線量の範囲に入るものです。私が知る限り、世界中で受け入れられている被ばくの基準があります。この基準によると、放射線従事者個人が1年にホール・ボディに被ばくしてもよい線量5レム[50mSv]が低線量放射線レベルの最高許容線量です。

E:レムというのは具体的に何を意味し、放射線レベルが時にはラドという単位で表されるのはなぜですか?

U:低線量放射線レベルはラドかレムで表されます。ラド線量は体の組織が吸収するエネルギーを表します。これは非常に明確な計測単位です。それは組織1グラムにつき、100エルグ[ergsエネルギーの単位]です。レム[remはroentgen equivalent manの略、人体レントゲン当量]は生物学的な損傷を与えるのに必要な線量です。それは、X線の1ラド(10mSv)で起こる損傷です。定義では、X線とガンマ線ではラドとレムは同等です。しかし、これは低線エネルギー付与(low linear energy transfer LET)の放射線の場合のみ同等なのです。損傷をもっと与える高LET放射線では同等ではありません。中性子、プロトン、アルファ線粒子などです。したがって、レムというのは生物学的被害において、すべてのタイプの放射線が同じではないという事実を考慮している単位なのです。放射線防護の目的では、レム線量を出す場合に、ラド線量に「線質係数」(quality factor)をかけるのです。たとえば、低LET放射線の線質係数は1です。しかしアルファ線の場合、線質係数は20です。ですから、アルファ線粒子のレム線量を出すためには、ラド線量を20倍にするのです。

E:ある特定の個人の許容線量と人口全体の平均許容線量とに違いがあるのはなぜですか?

U:全人口の低線量被ばくに関して、1950年代の主な懸念は放射線による遺伝子損傷で遺伝的異常が起こる可能性でした。米国科学アカデミーの放射線に関する諮問委員会は、個人が1年間に受ける人口の被ばく限度を170ミリレム[1.7mSv]にするよう勧告しました。国民線量(population dose)—バックグラウンド放射線や医療被ばくを除いて―を一人年間170ミリレムに制限すれば、人口全体に大きな影響を及ぼす遺伝子損傷を起こさないというのが委員会の理由でした。国民平均のこの被ばくレベルを達成するためには、時には個人が年間500ミリレム(5mSv)までなら認めてもいいという計算です。個人に170ミリレムの制限をするのに同じ理屈はありませんでした。なぜなら、懸念されたのは個人の被害ではなく、全人口の遺伝子保全(genetic pool of the whole population)だったからです。覚えておいてほしい重要なことは、これらの線量は許容制限値の最高値だということで、ほとんどの放射線従事者はこれより低いレベルを被ばくしていることです。

E:このレベルでは危険はないのですか?

U:当時は突然変異率が上昇する可能性があると考えられていましたが、上昇率は小さいから遺伝性疾患に有意の上昇はないだろうという見方でした。たとえ2,3人を被ばくさせても、全人口に深刻な遺伝的リスクを起こすことはありません。遺伝子損傷の全体的事例が有意に上昇するまでには、多くの人が被ばくしなければなりません。これがその頃の区別の仕方でした。個人の被ばく限度と全人口の被ばく限度の区別の基礎だったのです。

E:これ以下の線量では放射線被害がないというしきい値があるのか無いのかという論争の要点は何ですか?

U:しきい値があるということは証明できないし、今では推定もしていません。最初のBEIR(米国科学アカデミー電離放射線の生物影響に関する委員会)レポートが出た時[1972年]、ものすごい議論が起こりました。私はこのレポートの推定がんリスクに関する小委員会の議長をしましたが、多くの委員が推定リスクは範囲形式で示されるべきだと主張しました。つまり、年間1レム[10mSv]被ばくした100万人につき何人がん罹患があるかという数字から、ゼロまでの範囲です。この理由は放射線によるがんリスクはゼロだと予想することに妥当性がなかったからです。同時に、範囲を使用するなら、上限値に注目すべきだという論もありました。なぜなら、低い制限値は机上の空論(academic)で、実際のリスクが誇張されているという意見です。

 しかしながら、放射線生物学にはしきい値の存在を示す効果もあるのです。たとえば、骨髄の造血細胞の大部分を殺さない限り、被ばくした個人の生命が脅かされるわけではない、予備能力(reserve capacity)が十分に備わっていることもわかっています。目の水晶体にわずか2,3ラド(20〜30mSv)照射すれば、細胞のいくつかを損傷することができることもわかっています。顕微鏡で見ると、小さな白濁が見られるのですが、視力障害になる白内障を起こすことはありません。白内障を起こすには、数百ラド[5,000〜6,000mSv]の線量が必要です。現在では、細胞修復が起こることもわかっています。20年前にはわかりませんでした。しかし、この修復が100%効果があるのかはわかりません。逆に、最小の線量であっても、完全に修復されずに、残留損傷があるかもしれないと推測しています。

E:その残留損傷の細胞はがんになるのですか?

U:そうなるかわかりませんが、そのような損傷した細胞は最終的にがんになると仮定しています。すべてのタイプの電離放射線は発がん性で、骨髄、肺、皮膚の細胞のDNAに与える損傷は結果的にがん細胞に発達することは考えられます。しかし、しきい値の問題に戻ると、現在の論争は、線量が低くなればなるほど線量効果の曲線の形をめぐる問題のような問題ではありません。

E:では何が問題なのですか?

U:BEIR III委員会[訳者解説:この報告書「低レベル電離放射線の国民に与える影響(自然放射線、医療放射線、職業被ばく)」は1979年に出された後、大論争になり、1980年に過小評価された修正版が提出された。9—1—2を参照のこと]は当初BEIRの最初[1972年]の立場に同意していたようです。つまり、直線外挿法(linear extrapolation)はリスクの深刻な過小評価も過大評価もしていないという想定を承認したのです。しかしながら、委員会はこの件について今では分裂しています。ある人はこれが妥当な仮定だと感じ、別の人は低LET放射線にとって、この直線外挿法は多分保守的過ぎると示していると感じています。また別の科学者はこれは高LET放射線にとってさえ適当ではないかもしれないと信じています。

E:つまり何が安全レベルなのかという点で意見の相違があるということですね。

U:違います。現在の論争は安全レベルがあるかないかということではないと思います。放射線のどのレベルも完全に安全だと仮定する理由はないという点では全員一致していると思います。むしろ、論争は自然バックグラウンドの放射線の線量域でリスクがどの程度大きくなるのかという点です。つまり、年間1レム[10mSv]の10分の1[1mSv]程度です。放射線の膨大なデータは100ラド[1000mSv, 1Sv]の範囲での観察から生まれています。したがって、これを1ラド[10mSv]かそれ以下の範囲まで下げて推計しなければなりません。しかし、100ラド[1000mSv]で観察された被害の100分の1が1ラド[10mSv]で起きると推定することができるでしょうか。あるいは、これより高い線量の被害の1000分の1しか被害をもたらさないのでしょうか?

E:そのデータの根拠は何ですか?

U:放射線の証拠は基本的に動物実験と単離細胞(isolated cells)の検査からきています。この問題を最終的に決着つけるには、人間のデータではあまりに不確実なことが多いのです。

E:人間のデータは原爆の生存者の研究からきているのですか?

U:この人々が最大の疫学研究に貢献していますが、その他にも一致する研究があります。職業被ばくした人々の研究や、良性疾患(benign diseases)で放射線治療を受けた患者の研究、別の症状でX線診断を受けた患者です。様々な幅広い疫学調査研究があります。しかし、それらは低線量における線量効果曲線(dose-response curve)の形を定義付けるには統計的に精密とは言えないのです。

E:連邦政府の現在の安全基準は1960年に定められました。この基準が修正されるべきか否か、あるいはこれが今日も適切かについて、過去20年間に何か学んだのでしょうか。

U:リスクが1972年[BEIR I報告書]に考えていたより大きいと、新たなデータが示しているとは思いません。結果として、被ばく限度を変える新たな根拠があるとも思いません。問題は本当に社会の問題であって、科学の問題ではありません。放射線従事者のために、安全余裕線量(margin of safety dose)をどの程度にすべきだと社会が考えるのかです。BEIR I委員会が開発したおおざっぱな経験則(rule of thumb)を使えば、年間1個人が100ミリレム[1mSv]被ばくすると、全人口のがんリスクが1%程度増加するという推定になります。放射線従事者の年間平均被ばく量は約100ミリレム[1mSv]ですから、これらの放射線従事者は平均してがんリスクが1%高まることになります。放射線従事者がこのリスクを受けるのは妥当だと認めるか、このリスクをもっと小さくすべきでしょうか? 放射線従事者の平均的リスクを他の分野の職業リスクと比べると、現在行われている放射線関連の仕事のリスクはその他のほとんどの職業と遜色ありません。

 放射線関連の仕事は農業や交通関連業務や製造業と比べて危険だとは思っていません。放射線の仕事が他の分野より安全であるべきだと決めるのは社会です。しかし、もしそうなら、必然的に代償(trade-off)が出てきます。ある種の職業は他よりも高くつき、そのコストは公衆に転嫁されるでしょう。

E:安全基準の設定には、医学的配慮と経済的配慮は同等、あるいは経済的配慮の方が大きな役割を果たすとおっしゃっているのですか?

U:バランスの問題だと思います。政府の規制者と話すと、彼らが経済的インパクトも考慮しなければならないと言うでしょう。理想的にはリスクのない世界で暮らしたいですが、現実的には妥協が必ず必要です。放射線関連の仕事で最優先の原則は、仕事を実現不可能にしないようにしながら、線量を達成可能なレベルに下げることです。原発稼働が作業員の年間被ばく量を最高にするようには計画しないものです。その反対に、被ばく量を可能な限り低くするように原発作業を計画します。実際に現在の平均被ばく量は許容量の最高値よりずっと低いのです。

E:放射線従事者のリスクは以前想定されていたよりずっと高いことを示すマンキューソ(Mancuso)・スチュワート(Stewart)・ニール(Kneale)の研究(9—1—2を参照 [2])について、あなたのご意見は?

U:我々のリスク計測は理論モデルから生じた外挿法に基づいています。もし観察されたものが我々の予想に反するものだったら、我々のモデルが間違いだと認めざるを得ません。これが現実的で説明的である限り、我々のモデルを実践的に検証しなければなりません。したがって、マンキューソのハンフォード作業員の研究はこの点で価値あるものだと思います。しかし、その発見の解釈は複雑です。作業員のがんが2倍になると結論付けるには十分な証拠ではないと思います。つまり、がん件数を2倍にする被ばく線量が、我々の現在のモデルに基づいた予測より小さいのだという結論には証拠不十分です。

E:複雑な要素というのは何ですか?

U:その他のリスク要素を無視することはできません。たとえば、ハンフォード研究における化学発がん物質への曝露です。また、単に低線量に被ばくしているだけでなく、作業員の体内に蓄積した放射線核種のかなりの線量に被ばくしている可能性です。我々が行っている線量評価はバッジの平均的測定に基づいているだけです。それに加えて、少人数を使った研究固有の統計学的問題が必然的に起こります。

E:ある研究者が、被ばく後ある部位にがんの件数が増加し、別の研究者が別のがんの増加を発見し、さらに別の研究者が、がんの増加は全くないという研究結果を読んだら、かかりつけの医者はどう考えるべきなのでしょうか。

U:放射線がある種のがんを起こすリスクがあるという証拠はたくさんあると思います。放射線技師のフォローアップ調査では、多発性骨髄腫(multiple myeloma)の増加を示しています。強直性せきつい炎(ankylosing spondylitis)の放射線治療に関するデータは膵臓がん、白血病、その他の腫瘍のリスクが[放射線治療を受けた]患者に高まることを示しています。さきほどお話ししたマンキューソの研究でも同じように、いくつかの部位でがんのリスクが増えることを示しています。

 しかし、この証拠は暫定的です。ですからこのことで驚くべきではありません。科学というのは証拠をだんだん積み重ねていき、最初は予備的で、最初の頃は矛盾が多いものなのです。放射線の研究を続けるうちに、証拠をしっかりしたものにしていき、現在の確信を確証していくか、研究の最初の頃に真実だとみえたものを反証するかもしれません。

 意見の相違や明らかな不確実性は放射線研究に特有なことではありません。現在、我々は環境化学物質をめぐって国をあげて大きな議論の真っ只中にいます。環境化学物質は発ガン性か、必要なものなのか、サッカリンの問題がよく物語っています。サッカリンは発がん物質なのか、禁止すべきか、加工食品やソフトドリンクに広く使ってもいいのか? 現在の議論は前向きな発展です。我々は証拠の評価をオープンにし、徹底的にすることを見せなければいけません。すべてが公明正大で、証拠を操作するために秘密裏に行おうとするものではないと、公衆に納得させなければいけません。科学者は責任があり、危険度と受益度の計算をする際に我々が可能な限りリスクを反映していることが公衆に100%明らかにされなければなりません。

E:アメリカ人は今年240,000,000回X線を受けると推定されています。医者はX線仕様についてもっと慎重になるべきだと、勧告なさいますか?

U:その通り、勧告します。ご存知のように、保健教育福祉省の電離放射線に関する省庁間作業部会(HEW Interagency Task Force on Ionizing Radiation)も最近この勧告をして、被ばく回数と1回の被ばく量を下げる方法についての勧告を報告書として大統領に提出しました。この報告書の中に医師の処方基準のアウトラインの項目があり、レントゲン検査の不適切な指示を論じたり、医学部の学部生向け教育にその結論を盛り込む提案をするなどしています。

E:乳がんの早期発見のためスクリーニングに低線量放射線を使うことについては、どうお考えですか?

U:アメリカがん協会(ACS)と国立がん研究所(NCI)主催で行われている乳がん発見デモンストレーション・プロジェクト(BCDDP)は多くの女性が乳がん発見を効果的に行うために設計されました。BCDDPは毎年行われるスクリーニング・プログラムでX線マンモグラフィーと診察の両方で、スクリーニングを受けたあらゆる年代の女性に早期発見が高い確率でできることを証明しました。発見されたがんの3分の1以上が直径1㎝以下で、約70%は腋窩リンパ節がかかわっていませんでした。これは50%以下の限局性がんの全国的発見率を優位に超えています。ただし、この二つの率は厳密には一致するものではありません。

 診察に加えてマンモグラフィーを行うことは、[がんの]限局的段階での発見を高めると期待されており、スクリーニングを受けた人の長期生存予測を改善します。これは健康保険プラン研究(HIP, Health Insurance Plan Study 注3 [1])の以前の調査結果と一致しています。さらに、マンモグラフィーの機械と技術の改良で、検査時の放射線量をかなり低くでき、同時に発見率を上げることができるようになりました。ただし、低線量放射線のリスクを正確に計測できる方法はまだ存在していません。

 結果的に50歳以上の女性と若い女性でリスクの高いグループの定期検査に、低線量マンモグラフィーを含むことを今日では推奨できるわけです。これで1977年に独立系専門家パネルが承認した、リスクが最小で便益がリスクを上回ると保証できるのです。しかし、乳がんスクリーニングでX線マンモグラフィーを含むという勧告は、スクリーニングを受ける人に多量の放射線量を与えるマンモグラフィー・システムに代えて、低線量マンモグラフィーを使うという仮定に立っていなければいけません。検査で受ける放射線量は可能な限り少ないという原則にのっとっていること、その放射線技術がよく、画像の質も良いままで最小線量にするということです。

E:放射線被ばくで心配される主な病気は何ですか。

U:白血病が最も早く起こります。被ばくから2〜4年以内に現れ、最初の10年でピークに達します。白血病のリスクはその後次第に低下し、被ばくから20〜30年後に正常範囲に戻ります。増加の主なものは急性、慢性の骨髄性白血病でした。レントゲン検診による胎内被ばくは約1ラド[10mSv]ですが、これは小児白血病のリスクを50%増加させます。甲状腺がんは子ども時代に肥大した胸腺が被ばくすることで起こるのかもしれません。脳腫瘍や腎臓がんを含むその他のがんも被ばくした子どもに起こることがあります。被ばくした大人の場合、肺がん、消化管がん、尿路がん(最近の日本の証拠がこれを示唆しています)、骨がん、皮膚がんなどです。被ばくに最も敏感な組織は明らかに女性の乳房です。これらが被ばくによって起こる主ながんです。

E:昔は適切だと考えられていた放射線治療は今では医原病[診断や治療によって起こる病気]を起こしています。それでも放射線を使って「害を与えない」と言えますか?

U:これは医学のジレンマです。ヒポクラテスの誓い[医師倫理綱領の宣誓]の教義の一つは、おっしゃるように、害を与えないことですが、現在「知っている」[原文強調]ことが明日も正当だとは、私たち一人として確信が持てません。もし100%安全を望むなら、医学の分野には入るべきではありません。

 なぜなら、私たちは放射線が害を与え「うる」[原文強調]ことを知っており、しきい値の存在に自信がないから、患者に不必要な放射線被ばくを最小限にするよう、出来うる限りのことをしなければなりません。放射線に伴うリスクを過小評価しないために、これまで75年間十分な情報を集めてきました。とにかく、被ばくの便益が予想されるリスクを上回ることをできる限り確かなものにしなければなりません。この点で、BEIR IIIレポートも最近の国連レポートもリスク推定を高めていないと示したことは特筆されます。それどころか、リスク推定を低めたと示したのです。

 いつか、我々のリスク推定が一般集団のうち個人を取り上げることができるかもしれませんが、現在それは不可能です。しかし、放射線感受性の根拠について、もっと知るにつれて、高リスクの人々を特定することができるかもしれません。それまでは、患者に便益を与えるために放射線器具を使うことは当然ですし、そうすることで、放射線に伴うリスクを最小化するよう努力しなければなりません。

E:ありがとうございました。

訳者コメント:

ラドとレムの違いについては、1976年アメリカ議会セミナー参加者の間でも混乱があることが窺える。本サイト5—3「現行の原発作業員に対する線量限度が高すぎる」 [3]で官許保護庁のエレット博士がバーテル博士に、ラドとレムの違いについて説明を求め、ベーテル博士が「ガンマ線の外部被ばくの場合、ラドもレムも基本的に同じです」と答えている。

注1:Interview, Low-Level Radiation, the Editor interviews: Arthur C. Upton, M.D., National Cancer Institute, Bethesda, Maryland, CA-A CANCER JOURNAL FOR CLINICIANS, Vol.29, No.5, September/October 1979
ネット上でInterview: Low-level radiation Wiley Online Libraryで検索すると、pdfにアクセス可。
注2:ワイリー・サイエンスカフェ「全ジャーナル中インパクトファクター第1位の医学誌『CA』って? 100を超える高1Fにはこんな事情が」2012年12月20日
http://www.wiley.co.jp/blog/pse/?p=14031 [4]
注3:HIP研究について、エヴァンズ教授が2012年の論文で以下のように解説している。
1963年にニューヨークで始まった研究で、40歳から64歳の女性60,000人をランダムに抽出して、年1回のマンモグラフィーと乳房診察を行い、10年間のフォローアップ後にこのグループでは乳がんの死亡率が29%下がったことが発見された。(中略)1970年代後半に、この研究はアメリカがん協会の全国乳がん発見プロジェクトのお膳立てをする役割を果たした。
W. Phil Evans “Breast Cancer Screening: Successes and Challenges”, CA: A Cancer Journal for Clinicians, Vol.2, No.1, 2012
PdfはBreast Cancer Screening: Successes and Challenges Wiley Online Library [5]で検索するとアクセス可。