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8-6-6 3号機がれき撤去による大量放出をめぐる議論

2013年秋の南相馬の玄米汚染について、福島県と農林水産省が調査したところ、原因は2013年8月の3号機がれき撤去による放射性物質の大量放出でした。ところが、原子力規制委員会+規制庁は「ねつ造」とも評される数値を作り上げて、南相馬のコメ汚染はがれき撤去のせいではないと根拠のない結論を出しました。その後の国際研究チームによる実証調査によって、福島県と農水省の調査結果が示した事実が証明されましたが、田中俊一規制委員長は「関係ない」としたまま、南相馬市に生涯1,000mSvを示唆しました。


 2013年秋の南相馬の玄米が基準値超過という新聞報道と、2013年8月の福島第一原発3号機のガレキ撤去によって大量の放射性物質が放出した事実の関連を、南相馬市とコメ農家、一般市民が知らされたのは、1年後だった。放射性物質の大量放出について原発外への警告もなく、それまで汚染されていなかったコメが汚染され、住民も被ばくしたであろうことは想像にかたくない。わかる限りの事実を時系列で記録しておく。

3号機がれき撤去と南相馬の玄米汚染の関連

2013年8月12日:

 東京電力プレスリリースによると8月12日午後0時33分頃、免震重要棟前のダストモニタで放射能濃度が高いことを示す警報が発生し、10人が頭部・顔面に最大約19Bq/㎠汚染した。原因はミストが汚染したと考えられる(注1) [1]

2013年8月19日:

 東京電力プレスリリースによると、8月19日午前9時半から10時にかけて、免震重要棟前のダストモニタの警報(放射能高高警報)が3回発生し、セシウム濃度の上昇を確認した。2名が頭部に汚染し、13Bq/㎠だった。発電所外への影響はない(注2) [1]

2013年8月19日:

 福島県原子力安全対策課放射線監視室19日付け文書「福島第一原子力発電所周辺のモニタリングポストにおける空間線量率の一時的な上昇について(第1報)」(注3) [1]によると、19日13時50分に県設置の双葉郡郡山局のモニタリングポストが1.195μSv/hを記録した。HP掲載日は8月28日である。

2013年8月27日:

 福島県原子力安全対策課放射線監視室HP「福島第一原子力発電所周辺のモニタリングポストにおける空間線量率の一時的な上昇について」という題名のページに、第2報(平成25年8月27日お知らせ)が掲載され(注4) [1]、「放出源は、当時の気象条件等から、風上に位置する福島第一原子力発電所と推定しました」と報告された。

 牧野淳一郎氏(理化学研究所計算科学研究機構)は岩波『科学』掲載の「3.11以後のリテラシーno.27」(2015年1月号 注5 [1])で、福島県が「一時的な上昇」としたことに異議を唱えた。19日の1週間以上前から上昇し、19日以後も上昇が続いていると、7月12日〜10月1日までの上昇グラフを示して、「『一時的な上昇』ではなく永続的な上昇」と指摘している。

2013年8月28日:

 『日本経済新聞』(注6) [1]によると、8月19日に双葉町郡山公民館の線量が1.195に上昇したこと、放出源は福島第一原発と推定されると、福島県が発表。東電は「双葉町との関連も含め調査を続けたい」としている。

2013年9月1日:

 『福島民友』が3号機問題について「8月19日、建屋から離れた免震重要棟前で、社員らの身体が放射性物質で汚染される問題が起きた」こと、「がれき撤去が原因という見方が強ま」ったこと、19日に北北西3キロの双葉町内で空間線量が一時的に上昇したこと、福島県は「当時の気象条件から、3号機のがれき撤去作業が原因と推定している」と報道した(注7) [1]

2013年10月4日:

 東電定例記者会見でフリーランスジャーナリストのおしどりマコさんが、3号機のがれき撤去で「数百メートル離れた免震重要棟前の連続ダストモニタリングの警報を鳴らす位、ダストが舞い上が」ったことについて追及した。

 4号機で作業しているチームが3号機のダスト舞い上がりでかなり被ばくするため、3号機と4号機の間に「カバーを付けて欲しい」という要望を出していることを、おしどりマコさんが監督責任のある東電に再三伝え要望していたが、東電は実施しなかったと回答した。そして、東電が事前の予告もなく、放射性物質が舞い上がったことを大分たってから報告したことを指摘した(注8) [1]

2013年10月8日:

南相馬市旧大田村産の玄米から120ベクレルの放射性セシウムが検出されたと福島県が発表した(注9) [1]

2013年10月20日:

3号機ガレキ撤去について、3号機が事故でどんな爆発があったのか等の現場検証をせずに、証拠を消していくことは次の事故の時にまた作業員が犠牲になると、原発推進派の作業員自身が疑問を感じていること、東京電力が危険なガレキ撤去作業についての情報を公開しないことは問題である(注10) [1]

2013年11月1日:

 この時期に東電が台風や豪雨でタンクエリアの汚染水問題が起こっていると言い始めていることについて、「護岸エリアの地下水が高濃度に汚染されていることのカモフラージュ」ではないか、また、8月から始まった1,3号機の建屋のガレキ撤去によって舞い上がったダストがプルームになって近隣地域に流れた可能性が高く、そのカモフラージュの疑いも拭えない(注11) [1]

2013年11月21日:

 東京電力報告書「免震重要棟前ダスト濃度上昇及び身体汚染者発生に関する原因と対策について」(注12) [1]によると、「再発防止対策」として「飛散防止剤の濃度を100倍希釈から10倍希釈に変更」し、散布範囲も広げる。

 つまり、経費節約のために作業員を被ばくさせ、南相馬のコメを汚染させたのだろうか。セシウム粒子の吸入によって多くの市民が追加被ばくした可能性もある。

農林水産省の調査

 南相馬の特定の地域のみが基準値超過していたため、農林水産省と福島県が調査を開始した。

2014年1月:

 農水省が原子力規制庁に「25年産米の南相馬市での基準値超過に関する調査結果」を説明した(注13) [1]。25年産米で基準値超過15地点のうち、14地点は南相馬市旧太田村だった、この14地点では「吸収抑制対策を実施したにもかかわらず基準値を超過」していた、24年産米では基準値超過がなかった、交差汚染防止対策を実施していた、稲穂の籾が汚染されていた、土壌の再巻き上げの可能性は低い、用水の影響は確認されないなど、外部からの直接汚染の可能性が高いことが示唆される綿密な調査結果だった。

2014年2月14日:

 農水省が南相馬市地域農業再生協議会に説明した(注14) [1]。1月の規制庁への説明と異なる点は、「土壌が放射性セシウム濃度が高い米を発生する要因の一つ」としているが、提供グラフによると基準値超過の土壌を用いた幼苗試験結果は、太田地区のいずれでも100Bq/kgを超えたものはなかった点だ。解説に「旧太田村の基準値超過には土壌以外の要素も影響している可能性が示唆された」と書かれている。結論として、「出穂後の稲穂への付着等、栽培期間中の稲体への放射性物質の直接付着が影響していた可能性が考えられるが、現段階ではその原因は不明である」と書かれている。

4ヶ月遅れの公表と報道

2014年3月3日:

 「農林水産省が東電に対し、セシウム検出の原因ががれき撤去作業である可能性を指摘し、防止策を要請した」のは3月3日だったと、東電が2014年7月15日に明らかにした(注15) [1]

2014年7月14日:

 福島県が2013年10月の南相馬のコメの汚染は、2013年8月に福島原発3号機のガレキ撤去作業で飛散した放射性物質が稲に付着した可能性が「限りなく高い」とした。東電は高線量のがれきが残る1号機の建屋のカバーを近く解体する方針で、「放出量」は増えるとし、飛散防止剤の散布を増やして対応するという。村山武彦東工大教授(リスク管理論)は「飛散の可能性を情報提供するのが大前提だ」と指摘した(注16) [1]

 農水省も東電も10ヶ月間も南相馬市には伝えず、放射性物質が飛んでいるという情報をなぜもっと早く伝えないのかと市とコメ農家から疑問の声があがった。東電は「因果関係はわからないので説明してこなかった」と話した(注17) [1]

2014年7月15日:

 メジャー・メディアが1年後に因果関係を報道する中で、おしどりマコさんは調査関係者を取材して、2月14日に農水省が南相馬市地域農業再生協議会に説明した時の資料を入手し(農水省HP公開は2014年8月25日)、次の事実を関係者から聞いたと発表した(注18) [1]

 「放射性物質が付着している稲穂の部分は、8月に成長する部分」「同じ地域で7月に収穫した小麦などには付着が見られない」「除染していない山などから放射性物質が舞い上がって付着したのなら、その他の地域・時期も同じような現象が見られるはずだが、ない」などから、「天候・風向きなど、様々な調査を重ねた結果、やはり、福島第一原発から風に乗り飛んできた」のではないかという結論になるという。

 「農水省や福島県は、放射性物質が土や水から作物にどのように移行するか、どうすれば低減できるか、などの調査を本当に真摯に調査・研究しているが、環境からの移行ではなく、事故から2年たった2013年にも直接付着がみられるような状態、福島第一原発から放射性物質を放出している状態であれば、もう対応できない、と怒りをあらわにしていた」。

2014年7月16日:

 地元自治体や農家に説明してこなかった理由を東電は「因果関係が不明であるため」としているが、「ダストが舞って堆積した可能性はゼロではない」と認めた。がれき撤去作業で放射性物質が飛散する可能性は「考えたことはなかった」とのべた(注15) [1]

2014年7月16日:

 日テレNEWS24「ガレキ撤去、50キロ先にもセシウム飛散か」(注19) [1]によると、京都大学大学院の小泉昭夫教授の研究グループが南相馬市や相馬市の大気中のセシウム濃度を調べ、2013年8月15日〜22日に、南相馬市原町区で通常の30倍の濃度が検出されたという。福島大学の調査では、宮城県で8月19日を含む観測日に100倍程度大気中濃度が高くなっていることが明らかになった。渡辺特認教授は「1号機カバーを外すと1000倍くらいになるという話もあります。(方射性物質が)飛散しながら廃炉作業が進んでいく(中略)。我々住民からすれば、1ベクレルでも排出されては困るという感覚がありますので、注意をしてほしい」と述べた。京都大学チームはストロンチウムやプルトニウムが含まれているかも調査する必要があると話している。

2014年7月18日:

 農水省と東電が南相馬市役所を訪れ、事実関係を説明した。農水省の担当者は「(基準値超えの)原因はいまも不明。森林や土壌からの巻き返しなどほかにも可能性がある」などと主張し、謝罪しなかった(注20) [1]。謝罪すべきは東電ではないのか。

同日:

 農水省が南相馬市地域農業生産協議会に説明(注21) [1]した。この説明文書は調査方法や過程についてで、結果が示されておらず、3月の報告書から後退した印象が否めない。「がれき撤去との因果関係は断定できない」と主張する東電と、「考えられない」と非科学的な主張をする規制委員会の圧力がかかったためかと疑われる内容だ。

原子力規制委員会内での議論

2014年7月23日:

 原子力規制委員会第25回特定原子力施設監視・評価検討会で東電が2013年8月19日の放出量は1兆1000万ベクレルと推定と報告した。免震重要棟前ダスト濃度から推定した放出率は2800億Bq/時、放出時間は4時間とされた(注22) [1]。牧野氏は『科学』2015年7月号掲載の「3.11以後の科学リテラシーno.27」で、この委員会での議論は「あまりおかしなことはなかった」が、それ以降は推定量を下方修正していき、最後には非科学的な「トンデモ」議論に終始すると批判している(注23) [1]

 飛散と放出状況に関して、東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの中村紀吉氏が説明すると、更田豊志委員が飛散防止剤散布について細やかな対策が必要だったと東電の杜撰さを指摘した。外部委員の渡邊明福島大学理工学研究所教授は微細な粒子は上空高く飛散するので、モニタリングを敷地境界だけでなく、環境をきちんと計測すべきだと指摘。

 放出量推定値に関して、更田委員が「かなり保守的な評価」「大目に見積もって」いると繰り返し言い、「正しく怖がることが重要なのに」と批判がましく言うのは、低く見積もれと東電に示唆しているように聞こえる。

2014年7月23〜24日:

 メディアは「東電は毎時2800億ベクレルの放出が四時間続いたとして試算」し、「がれき撤去作業 推計1兆ベクレル」(東京新聞 注24 [1])、「放射性物質1兆ベクレル超放出」(読売新聞 注25)と報道した。また、いずれのメディアも、「平常時の放出量は毎時1000万ベクレル」と伝えている。

原子力規制委員会が東電の放出量計算を10分の1に下げろと命令

2014年8月19日:

 原子力規制委員会第26回特定原子力施設監視・評価検討会(注26) [1]で東電は前回より1桁少ない放出量推定値を提出した。更田委員が前回の東電の推計値が保守的で、「ある意味、危険なことですので、できるだけ正確な評価をということで、改めて推定値の算出を求めた」と説明した。規制委員会からの再計算を求められて、東電・福島第一廃炉カンパニーの白木洋也氏が前回の推定値の10分の1という数字になったと報告した。その計算の元となる、ダストモニタの「当時の運用があまりよろしくなくて、一方のほうは人為的に操作してしまった」など、その他にも不完全なモニタ計測の理由を長々と述べている。

 それを受けて、更田委員は「工学的な直感としか申し上げようがないのですけれども、なお過大評価しているのじゃないか」と発言。東電の姉川尚史・原子力立地本部長は「数値としては、計測器を信じるしかありませんし、そのときの風向・風速の詳細がわからない以上、割と漠とした逆算をするしかない。それで、この計算になっています。全く一個人の感覚から言うと、事故時の1/10,000といっても、それはかなり大きいので、少し不自然な感じはします」と弁明。

 更田委員はさらに「過大評価」を繰り返した。外部専門家の角山茂章・会津大学教育研究特別顧問は「米がセンサーがわりになって(中略)、水田から吸い上げられたとは到底思えなくて、また、交差汚染もないのではないかということで、取り込まれたと考えるのが自然」と発言し、「規制委員会も農水省と議論していると聞いているのですが、議論の状況をぜひ逐次公開していただいて(中略)、一般の方が安心するように解明を急いでいただきたい」と表明した。更田委員の締めくくりは「この推定値の確からしさについては、規制庁の方で確認させてもらいたい」だった。

原子力規制庁の「トンデモ」計算と規制委員長の「トンデモ」結論

2014年10月31日:

 原子力規制委員会第28回特定原子力施設監視・評価検討会(注27) [1]で、今度は規制庁の金城慎司・東京電力福島第一原子力発電所事故対策室長が規制庁の評価を報告し、放出量がさらに下がった。外部専門家の渡邊明・福島大学理工学研究科特認教授が「ガレキ撤去の中でこういう事故が起こった(中略)、これからの福島第一原子力発電所での作業の中で、こういう量が出るということは今後もあり得るのかどうかという問題」を指摘した。

 更田委員が「渡邊先生の御発言の中に『事故』という言葉がありましたけど、確かに検出できるような変化ではあるかもしれないけれど、じゃあ、これを過大に見てしまうことは、この福島第一原子力発電所のリスクを下げていくという意味においては弊害がある(中略)、数キロ離れたところだったらば、空間線量率に出るか出ないかの程度であろうと思って、有意な影響というのは、恐らくはサイト内にとどまっていると考える程度の量だろうと思います」と驚くべき発言をしている。素人市民が聞くと、多量の追加放出を事故と呼ぶな、放出量を過小評価せよ、どんなに飛散しても原発内にとどまっている、60km先で被ばく汚染があってもリスクと捉えるなと受け取れる。この後も更田委員の「トンデモ」発言は続くので、ぜひ多くの人に読んでもらいたい議事録である。

2014年11月26日:

第41回原子力規制委員会(注28) [1]での議論と結論について、牧野氏(注23) [1]がまとめているので、概要を紹介する。

 2013年8月19日の3号機ガレキ撤去作業中にダスト放出があった時間に3km離れた双葉町郡山で34,000Bq/㎡の降下が実測されたのに、規制庁ではSPEEDIの予測値を計算し、144Bq/㎡とした。実測値と予測値の差が最も少ない南相馬市馬場(原発から23km)でも、実測値が123Bq/㎡に対しSPEEDI計算では20Bq/㎡としている。これらの実測値を無視して、委員長の田中俊一氏は「汚染はがれき撤去によるものではないことが明らかになった」と結論付けた。これは「都合の悪いデータを無視する」「データ捏造に限りなく近い行為」であり、それが「真っ当な科学的検討ができなければなんの意味もない組織で実際におこっている」と牧野氏は批判する。そして、その結果がどんな事態を引き起こすのか、多くの市民が理解する重要性を強調している。

 当日の議事録によると、長官官房放射線防護グループ監視情報課長・南山力生氏が「放射性セシウムの降下量の計算」をSPEEDI(緊 急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)を使ってセシウムの降下量計算した結果を説明した。それに対し田中知委員が「放射性物質の降下量の評価は適切に行われた」「それが降下物の測定値に比べ ても、1パーセントとか、大変小さいことがわかった」と発言した。

 更田委員は実測値の信頼性、SPEEDIの限界(セシウム粒子の性状等がわからないので、技術的な限界がある)について疑問を呈したが、田中委員長は「今日の結果を見ると、これはがれき撤去によるものではないだろうということはほぼ明らかになった」と結論付けた。

 小豆川勝見氏(東京大学大学院総合文化研究科)は『科学』(2015年12月号)掲載の「福島第一原発3号機のガレキ撤去と南相馬市における再汚染の関連」(注29) [1]で、実測値とSPEEDIによる計算値の差について、「実測値と2桁異なるシミュレーションは(緊急時に避難するか否かに時間的な猶予がない場合を除いて)果たして因果関係に有効なのか、大いに疑問が残る」と述べている。

田中俊一原子力規制委員長の支離滅裂さ

2014年11月26日:

 原子力規制委員会記者会見(注30) [1]で、NHK記者が「米の汚染はがれきの撤去によるものではないという見解が示されて、考えられるのは事故直後のフォールアウトが何らかの形で米に移行したものであるということだったのですが、(中略)フォールアウトはどのような形で米に移行した」のか例を挙げてほしいと田中委員長に質問した。

 田中委員長は「ずっとがれきによる汚染ではないかということが流布されてきたけれども、それはもうないということがほぼ確実(中略)。特定の原因をはっきり言うことは、私は可能性も含めて何も言えません」と回答。原因の特定について、どこが主体となって取組を行うべきだと思うかという追求質問に対して、田中委員長は「それは言わずもがなではないでしょうか。少なくとも規制庁がやる仕事ではないですよね」と答えた。

 記者がさらに「規制庁がやることではないとすれば、言わずもがなとはおっしゃられたのですけれども、それはどこがやるべきだとお考えでしょうか」と追求した。田中委員長の回答は「ご想像にお任せしますけれども、食べ物とかいろいろなものに出てくるのは、しかるべき役所が決まっていますし、いろいろな研究機関も、大学の先生たちもいるとか、いろいろなことをやっていますよ」。

 記者会見のやり取りから見えてきたのは、規制委員会が福島県と農林水産省の綿密な調査結果を無視して、3号機のがれき撤去作業による追加汚染だという明らかな実測事実を、規制庁のシミュレーション計算によって全面否定したことだ。田中委員長は事故直後のフォールアウトによる汚染だと根拠のない説を述べた上に、「特定の原因をはっきり言うこと」はできない、その追跡調査は規制庁がやるべきことではない、農林水産省か厚生労働省がやるべきだという含みで、支離滅裂な回答である。

2014年11月26日:

 メディアは一斉に「コメ汚染 がれき撤去が原因ではない」(NHK 注31 [1])、「がれき撤去でコメ汚染されず」(産経新聞 注32 [1])、「南相馬市コメ汚染『がれき撤去と関連なし』」(日テレNEWS24 注33 [1])、「南相馬コメ汚染 がれき影響可能性低い」(河北新報 注34 [1])などと報じた。産経新聞の小見出しは「規制委が実測値報告」とされ、「規制委が放射性セシウムの実測値を分析した結果、(中略)20キロ以上離れた南相馬市までは届いていないとした」と報道されている。

田中委員長の暴言

2014年12月1日:

 農林水産省・福島県「南相馬市における玄米の基準値超過の発生要因調査(平成26年12月1日)」(注35) [1]には、稲に付着していた粒子の「大きさは土壌中に存在する粒子に比べかなり小さいほか、土壌団粒と元素組成が顕著に異なることから、土壌の巻き上げに由来するものではないと考えられた」「南相馬市の各地で実施した26年産米の試験ほ場の稲に(中略)放射性物質が付着しているものはみられなかった」とされている。

 また、同じ日付の農林水産省・福島県「南相馬市における玄米の基準値超過の発生要因調査—米の全袋調査結果及び基準値超過発生要因の調査結果とりまとめ」(注36) [1]も同様の調査結果だが、最後に「引き続き、詳細な元素分析を行い、由来に関する情報が得られないか検討するほか、他の時期や地域に拡げて大気中ダストサンプルの調査を続けて、降下物の物性等を検討することとしている」で締めくくられている。

2014年12月17日:

 原子力規制委員会記者会見(注37) [1]で、11月26日記者会見における田中委員長の発言(がれき撤去による汚染ではない)に対して、岩波『科学』の編集担当者が規制庁の「文書では観測値が計算値よりも最大250倍も高いことが示されています。委員長の御発言に対しては、現実を説明しないモデル計算を根拠にし、計算に合わない現実を無視するという態度であり、理解しがたい非科学的な主張だとする厳しい批判が上がっており、印刷中の『科学』1月号に掲載します。このように現実を無視する態度もまた規制基準の適合審査の内容を疑わせることになりかねません。委員長におかれては、御発言を変更なさるおつもりはありませんか」と尋ねた。田中委員長は「ありません。そちらの言っていることの方がおかしいのです」と回答した。

南相馬市からの情報開示依頼に原子力規制庁が回答拒否

2014年12月25日:

 南相馬市除染推進委員長・児玉達彦氏(東京大学アイソトープ総合センター長、東大病院内科医師を経て、東京大学先端科学技術研究センター教授)が南相馬市・桜井勝延市長宛に「南相馬市のコメ汚染と『平成25年福島第一原発建屋カバー解体・がれき処理により放射性セシウムなど規制された放射性物質を漏出した問題に関連する資料等について』(依頼 注38 [1]))を提出した。南相馬市から原子力規制委員会に対し、資料データの提供を依頼してほしいという内容である。

2015年1月12日:

 桜井市長は翌26日付けの依頼書を原子力規制委員長宛に出したところ、平成27年1月30日付けで原子力規制庁(責任者の氏名なし)から「南相馬市除染対策課(氏名なし)宛の回答が届いた(注38 [1])。素っ気なく「当該事故は原子力規制委員会への報告対象外であり、(4)及び(5)については回答できない」という文言だった。依頼(4)は「原子力規制委員会が当該事故を知った時期、担当者、対応及び関与」。(5)は「漏出にかかわる法律違反についての原子力規制委員会の対応」。

 この回答について、書面が届く前に口頭回答があったのか、1月12日に南相馬市除染推進委員長・児玉龍彦氏は「田中俊一原子力規制委員長の記者会見発言への情報開示を受けての南相馬市除染推進委員長所感」(注39) [1]を発表した。概要は、放射性ダストの漏出に関する被災自治体への情報伝達があったかの事実確認要請に対して、田中委員長は要請の意味が明確でないと回答を拒否したということである。

 児玉氏はこの回答について「規制委員会の情報開示に疑念をもたらしかねない」と述べている。規制委員会が東電から報告を受けた内容はホームページで公開すると規制庁は回答したが、8月12, 19日のダスト飛散について公開情報は確認できなかったと児玉氏は指摘する。

 また、このダスト飛散について規制委員会は原子力災害被災自治体など「国民への広報を目的とした特別な資料は作成していない」と回答した。児玉氏は「規制委員会は、放射線による傷害の防止、即ち、事業者が放射性物質を飛散させることを予防することを責務としている委員会である。(中略)原子力規制委員会がダスト飛散という明白な漏出事故を情報開示の対象と考えないことは著しくその信頼を損ねるものである」と批判した。

農林水産省に対して原子力規制委員会が圧力?

2015年2月12日:

 農林水産省が南相馬市地域農業再生協議会に「基準値超過の想定される要因及びその対策」を説明した(注40) [1]。この文書の中で、「その他の飛散(福島第一原発からの飛散等)の項目に規制委員会の結論「平成15年8月19日のがれき撤去に伴う飛散によるものでないことはほぼ明らか」を、下線まで付して追加しているのは非常に不自然である。福島県と農水省作成の緻密で科学的な調査結果から、どう見ても福島第一原発からの飛散であることが明らかなのに、規制委員会が農水省に虚偽の結論を出させようとしているように見える。

農林水産省と福島県が調査すればするほど3号機がれき撤去による汚染が濃厚

2015年5月26日:

 農林水産庁・福島県が南相馬市地域農業再生協議会説明資料「南相馬市における玄米の基準値超過の発生要因調査」(注41) [1]を公開した。南相馬市小高区で生産された25年産稲の葉、南相馬市小高区の大気観測測定局の高濃度セシウム粒子、双葉町モニタリングポストで採取された大気中ダスト、2013年8月22日に3号機付近で採取されたダストを測定した結果、稲の葉に0.5マイクロメートルのセシウム粒子、小高局で1.5マイクロメートル粒子、双葉町郡山局で2マイクロメートル粒子、3号機ダストに1〜2マイクロメートル粒子と25×35マイクロメートルの塊の上に1〜4マイクロメートル粒子が確認された。それらの元素組成分析の結果は、「元素組成のみからこれら粒子の相同性を確認することはできなかった」。一方、「土壌由来のものとは異なる」と結論した。

 半減期の短いセシウム134と長いセシウム137の存在比を分析した結果、直接付着の玄米中の放射性セシウムの存在比から、「農地土壌以外からの影響を受けていたと考えられる」と結論付けた。この他、用水検査など緻密な分析を公表しており、福島県と農水省の担当者の必死の努力の跡が見られる報告書だ。

 しかも、南相馬市の26年産玄米で基準値超のものは無かったこと、25年産で基準値超の生産者の米検査の結果も「全て50Bq/kg未満」と報告されている。稲への直接付着に関する「これまでの試験結果、専門家の意見等」に記載されている結果は次のようなものだった。

 「稲の葉に付着していた粒子は土壌粒子とは大きさや元素組成が異なっており、土壌由来とは考えにくい。他地域で同様の超過事例はみられておらず、汚染源とは考えにくい。花粉は多量に稲に付着するとは考えにくく、落葉も分解され土壌に移行しており、汚染源とは考えにくい。土壌などの環境からの再飛散では説明が難しいことから、引き続き様々な可能性を検討すべき。※平成25年8月19日のがれき撤去に伴う飛散によるものではないことはほぼ明らか(平成26年11月26日、原子力規制委員会)」(原文下線)。「明らか」なのが何かは素人にもわかる内容だ。

2015年5月27日:

 メディアの報道は「汚染米の原因わからず 農水省」(朝日新聞 注42 [1])、「南相馬のコメ汚染原因特定できず 農水省」(共同通信 注43 [1])など、一連の流れを不思議だとも思わない報道姿勢が多かった。メディアには政府の報告を垂れ流すだけでなく、検証する役割もある筈だ。

 地元の『福島民友』の報道「コメの汚染原因特定できず 南相馬で農家から不満、批判」(注44) [1]では、「土壌の巻き上げと農業用水が原因の可能性は低い」が、「明確な汚染源を特定できないまま調査を打ち切る方針で、農家からは批判の声が上がった」と、農水省に対する批判を強調している。

 牧野氏(注23) [1]は農水省の解説文が慎重になって、適切な推論や解釈を示したものではないと批判する。「今回の元素分析の結果とこれまでのデータを合わせると、郡山や小高の8月19日のダストは、ほぼ間違いなく同じ8月19日に3号機の工事現場からでたものであり、それ以外の解釈はおよそナンセンスである」と述べた。

 『福島民友』記事にある「説明を受けた農家は『トラブル続きの原発が原因としか思えない』」を引用して、まさにその通りであること、「この件に関する原子力規制委員会の見解はまったく非科学的なアクロバティックな解釈に固執する」と批判し、農水省としては規制委員会の見解と矛盾することは言わないために、調査を打ち切るということになったように見えると推測している。一連の流れを見れば、その通りのことが起こったのだろう。

2015年7月1日:

 原子力規制委員会記者会見(注45) [1]で、『科学』の編集担当者が5月26日の農水省の資料を「普通に解釈すれば、土壌から飛んできたとかいうようなものではなくて、やはり原発から飛散してきたものであると解釈するのが普通だと思うのです」と、田中委員長の見解を求めた。

 田中氏の回答は「随分短絡した議論ですね。そんなに簡単に科学ができるなら簡単ですが、まず、岩波の「科学」というものも少し読ませていただきましたけれども、書かれている先生もデータを見ていないのではないですか。(中略)科学者としては、とてもではないけれども、私にはまともな科学者とは思えないのです。それをもってあなたがここでごちゃごちゃ言うことは、私から見たら、あなたのあれもちょっとクエスチョンマークだよね」だった。

2015年8月20日:

 『毎日新聞』(注46) [1]によると、南相馬市の市民団体「原発事故の完全賠償をさせる南相馬の会」が2013年産南相馬原町区下太田のコメ汚染の「原因は特定できない」と結論付けた国の調査過程を再検証するよう求める要請書を南相馬市長に提出した。

非科学的な原子力規制委員会に対する科学的論文による反論

2015年10月8日:

 3号機がれき撤去による大量放出とその汚染事故をなきものにしようとする非科学的な原子力規制委員会に対する科学的な検証論文が2015年10月3日に国際学術誌『環境科学技術』(Environmental Science & Technology)に公開された。「福島第一原発事故後の散発的放射線核種の放出」(注47) [1]である。11人の国際研究者による論文で、所属を第一執筆者から順にあげる。アメリカのコロラド州立大学環境・放射線保健科学、京都大学防災研究所大気・水研究グループ、京都大学大学院医学研究科環境衛生学分野・東京大学大学院総合文化研究科・ETH(チューリッヒ科学技術大学)物理学部イオン・ビーム物理ラボラトリー。この国際研究グループの一人である小豆川氏が『科学』前掲書(注29) [1]で解説しているので、英語論文とあわせて要点を紹介する。

 「南相馬市で再汚染が発生した該当地域を中心に、2014年から土壌を採取し、詳細な分析を行った」結果、南相馬市原町に到着したセシウム137の実測値は18.4mBq/㎥だった。原子力規制委員庁のモデリングでは5.09mBq/㎥で、実測値より3.61倍過小評価している。相馬市玉野地区では、実測値が0.883mBq/㎥に対し、規制庁の見積もりは0.203mBq/㎥と、4.35倍の過小評価である。「南相馬市に設置してあるダストサンプラーの結果から、8月第3週に明らかに特異的な放射性セシウムのプルームが到達していることも確認した。(中略)この結論の内容は結果的に規制庁の予測とは異なり、農林水産省の調査結果と一致している」。

 この研究グループが発見したもう1点の恐ろしい事実は、新たな汚染が発生した畑周辺に限って、異常にストロンチウム90/セシウム137比の高い汚染土壌だったことである。福島第一原発のごく限られた周辺でないと観測されない値である。結論として、2013年8月の放出量は福島第一原発のセシウム137全放出量(空気中)の5万分の1に相当する。

 この研究が明らかにしたのは、現在進行中で今後何十年も続く廃炉・解体作業がもたらす健康被害が差し迫っていること、放出される放射性粒子はセシウムだけでなく、より危険なストロンチウム90(骨に付着)やプルトニウムなどによるリスクも含まれることである。更なる漏えい事故を防ぐためには、現在の閉鎖的な体制から脱却し、世界中からの英知を集め、1F構内を研究者に開放して、深く詳しく調査をさせてもらいたいと締めくくった。

田中俊一原子力規制委員長の「一般市民も生涯1,000mSv」発言

2015年10月22日:

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は10月22日に南相馬市を訪問し、コメ汚染問題の究明を訴えた桜井勝延市長に対し、「原因をはっきりさせるのは農水省の役割」としたと、『福島民報』(注48) [1]が伝えている。この記事の中で、田中委員長の出身地を福島市出身と明記しているのが興味深い。福島県出身だから県民に理不尽な要求をしていると受け取るべきか、「福島県出身なのに」と読むべきか。

2015年10月24日:

 『河北新報ONLINEN NEWS』(「福島訪問の規制委田中氏『勉強しなさい』」 注49 [1])とOurPlanet-TV(「安全基準をめぐり『勉強しなさい』〜田中委員長が自治体幹部を叱責」 注50 [1])が伝えるところによると、南相馬市訪問中の田中氏が「生涯1,000ミリという基準がある」と、住民に対して1,000ミリを示唆したのに対し、南相馬副市長が1ミリと20ミリの間で参考レベルを示して欲しいと言うと、田中氏が「若いのだから勉強しなさい」と発言を遮った。両メディアとも副市長の発言には「事実誤認はなかった」と伝えている。副市長が田中氏に訂正を求める意味で発言したのは明らかだから、「勉強しなさい」という言葉は、田中氏の言葉の裏の意味(1,000mSvを受け入れろ)を勉強しろということか。

2015年10月28日:

 原子力規制委員会記者会見(注51) [1]で、その前の週に田中委員長が福島の各自治体の首長たちと会談した内容について、OurPlanet-TVの白石草(はじめ)さんが尋ねた。

白石:「南相馬で安全基準について、どこが安全か基準を示してほしいと問われたときに、委員長が、国際的には生涯1,000ミリシーベルトという基準があると言及されたんですけれども、言及された意味を教えてください」。

田中委員長:「現存被ばく状況という考え方ですよね。(中略)年間20ミリシーベルトだから影響があるかどうかということについては、あまり定量的な実証データはないとは思いますけれども、国際的な専門家は、20ミリシーベルト以下であれば、ということです。(中略)生涯1,000ミリシーベルトというのは、前のICRPの勧告で出ているのですけれども、日本はまだ取り入れていません。そういうことで、50年の生涯線量として年間20ミリというものも出てきているのかなと思いますけれども、それは事実としてそういうことがあるということです」。「この事故の後に、厚労省も内部被ばくの線量はそう決めたのではなかったかね。生涯線量としてね。違いますか」。

佐藤規制企画課長:「厚労省の方も当時は250というようなことで現存被ばく、作業員の被ばく限度というものを決めたということがあります。(中略)実際にICRPからの勧告も生涯1,000ミリシーベルトということで、(中略)科学的にそれなりに裏付けをされているものというふうに理解しているところであります」。

白石:「作業員かなと思っていたものですから、公衆だったので」。

 この後、田中委員長の発言の確認質問が続き、自治体ごとに実情にあわせて被ばく限度値を決めよと委員長が言ったことについて、それは提案、方針なのかと尋ねた。

田中委員長:「強制すべきものではないし、国が何か頭越しに決めるべきものではないという意味で申し上げています。(中略)地元の、実際のそこのステークホルダーがきちっと議論をして、(中略)南相馬市長が言うのは、国がいくらと決めろとかいうことなのだけれども、それは決められないものですということを言ったの」。

 田中委員長の発言の支離滅裂さをOurPlanet-TVの記事(注50) [1]は次のように指摘した。
(1)7月22日の記者会見で田中委員長は、帰還のための被ばく線量の目標値(参考レベル)を「国が検討することは重要だ」と述べていたのに、10月には「政府が定めるのではなく、自治体ごとに設定すべき」と言った。

(2)7月22日には「子どもの感受性を考えてせいぜい5ミリじゃないかと申し上げたことはあります」と述べたのに、10月22日に南相馬市で、28日に記者会見で、1,000ミリシーベルトと、180度異なる見解を表明した。

 これをどう解釈すべきか。7月から10月の間に大きな問題が浮上し、生涯1,000mSvにせざるを得なくなったこと、それを国が設定することは責任問題になり、国際問題にも発展しかねないので(既に安倍政権は人権問題で国連に問題視されている)、南相馬市に圧力をかけて決定させようとしているとも読める。ガレキ撤去や廃炉作業で既に新たな大量放出事故が発生し、隠蔽を続けているのかもしれないと不安にさせる委員長発言だ。

2015年12月24日:

 2015年12月25日の『毎日新聞』(注52) [1]によると、南相馬市除染推進委員長の児玉龍彦氏が、田中俊一規制委員長を強く批判する見解を発表したという。田中氏が2015年10月に南相馬市の櫻井勝延市長と会談した際に、コメ汚染と3号機のがれき処理との因果関係を否定した上で、「除染が終わっていない山から流れてくる水にセシウムが溶け込んでいる場合がある」「今後もそういう事例が出てくる可能性は否定できない」等と発言したことを強く批判した。見解そのものは南相馬市ホームページから見つけられなかったが、記事によると、「田中氏は現地の水源や水田の調査をしておらず、科学的検討を行った発言ではない」と批判したとされる。田中氏の「トンデモ」発言はさらに、コメや食品の基準値を国が「何で100にしたのか。500でよかった。それでも国際基準より厳しい」と政府の対応を批判したという。国際基準は1,000ベクレル/kgというのは曲解だということを本サイトでも指摘した(8—5—1 [2], 8—5—2 [3]参照)。

公衆被ばくは生涯1,000mSvが世界共通だと示唆する田中委員長の発言は正しいのか?

 上記記者会見での田中委員長の発言からは「日本だけが生涯1,000mSvの勧告を受け入れていない」とも受け取れるが、本当にそうなのか? まず、「前のICRPの勧告で出ている」と田中氏が言及したのは2007年勧告のICRP Publication 103(注53) [1]かと思い、調べてみたが、「緊急時被ばく状況 参考レベル」として、事故の救命者に関して「他の者への便益が救命者のリスクを上回る場合は線量制限なし:1,000又は500mSv」とあるだけで、緊急時被ばく状況下の公衆被ばくは「一般的に20mSv/年から100mSv/年の間」とされている。これは事故直後の緊急状況であり、「生涯」ではない筈だ。

 この勧告書の「現存被ばく状況」には住居内や作業場内のラドンについてだけ記述され、「参考レベル」は10mSv/年とされている。ちなみに、ICRPの「現存被ばく状況」の定義は「自然バックグラウンド放射線に起因する被ばく状況のように、管理に関する決定をしなければならない時点で既に存在する被ばく状況である」(p.xvii)。したがって、田中氏が現状を「現存被ばく状況」として1000mSvにせよと示唆するのは、ICRPの勧告からは読み取れない。

 欧米ではどうか調べてみたところ、「世界原子力協会」(World Nuclear Association)という原子力業界の組織のホームページに「ホールボディー放射線量の比較とその影響」(注54) [1]という項目があり、以下の例が記されている(2015年5月22日更新と明記)。

  1. オーストラリアのウラン鉱とアメリカ原子力産業の作業員の平均的線量:1.5〜2.5mSv/年
  2. オーストラリアのウラン鉱作業員の最高被ばく線量:10mSv/年
  3. 原子力産業とウラン鉱の作業員の現行制限線量:20mSv/年
  4. 原発事故後の公衆に対する暫定的安全レベル(7日間):170mSv/週
  5. 福島第一原発作業員に短期許容値として認められた線量とその他の緊急時制限線量:250mSv
  6. 100人中5人に致死的がんを生ずる線量(通常の致死的がん率が25%だとすると、この線量で30%に増加):1,000mSvを短期被ばくした場合。

 このホームページには福島原発事故後に日本政府が線量について、どう対応したか詳しく述べられているが、どこにもICRPが「一般公衆に生涯1,000mSvを勧告した」とは書かれていない。田中氏の曲解が生じたと思われる個所は「2011年3月、福島事故後すぐに、ICRPは『緊急時被ばく状況にある救助隊員の重篤な急性被ばく(severe deterministic injuries)を避けるために500〜1,000mSvの参考レベルを勧告』すること、同じ状況における一般公衆には『20〜100mSvを最高の残存線量として、状況がコントロールされたら、1〜20mSv』に下げることを勧告した」というくだりである。原発推進の原発業界組織だからこそ、世界中で公衆被ばく限度が「生涯1,000mSv」なら大々的に宣伝するだろうから、日本の原子力規制委員会と規制庁のすり替え、意図的読み替えではないだろうか。

 ちなみに、「世界原子力協会」ホームページに会員として名前が挙げられている日本企業は以下である。渥美酒井法律事務所・中国電力・日立・北海道電力・北陸電力・出光・伊藤忠・日本原燃・関西電力・九州電力・丸紅・三菱グループ・三井物産・四国電力・清水建設・双日株式会社・住友商事・日本原子力発電株式会社・日本製鋼所・東北電力・東芝など。興味深いのは、大学機関で唯一会員として名前があがっているインペリアル・カレッジ・ロンドンは7—4—2 [4]で紹介したジェリー・トーマス教授の所属大学である。大学ぐるみで原子力産業の協会メンバーということは、必然的に原子力産業に資する発言しかしないということではないだろうか。

 インペリアル・カレッジ・ロンドンで思い出されるのは、「イギリス在住の免疫学者・医師」小野昌弘氏が2015年に同大学上席講師に移籍し、ネット上に放射能問題について精力的に発信していることである。同氏は2011年6月に医学ジャーナルBMJ(英国医学雑誌)に「フクシマにおいては、倫理が科学に優先すべきである」(注55) [1]という文章を寄稿し、以下のように憂いていた。

 避難区域が設定されてはいるものの、Ce-134/137による線量が600GBq/㎢を超えるという、チェルノブイリでの「永続的管理地域」に相当するレベルの汚染があるホットスポットは、避難区域外において珍しくはない。憂慮すべきことに、公衆の許容線量が1mSv/年から20mSv/年にひきあげられたので、人々は影響をうけている地域で暮らせることになる。原発労働者の許容線量も100mSv/年から250mSv/年に最近引き上げられた。

 ところが、2015年にインペリアル・カレッジ・ロンドンに移籍した途端に、ネット上に「放射能恐怖という民主政治の毒」(注56) [1]というシリーズを掲載し始め、2011年の見解とは全く違う見解を表明している。小野氏が命名した(らしい)「放射能おばけ」という言葉がネット上に飛び交っているようで、高嶌英弘氏(京都産業大学法務研究科教授)がツイッターで問題点の指摘と小野氏への反論を展開した。それをまとめたtogetter(注57) [1]には、私自身が感じた小野氏の見解に対する違和感が論理的に説明されている。

 2015年の小野論は、放射能は危険(20mSvや250mSv)だという人々を「放射能おばけ」と呼び、その人々が社会に毒を流しているというのだが、安全だという科学的根拠を示さず、放射能は危険ではないという含みで、カルデコット博士などをやり玉にあげている。下に紹介する低線量被ばくのリスクを証明した研究や、チェルノブイリの健康被害に関するロシア政府、ウクライナ政府の報告書も否定するのだろうか。そもそも、なぜ日本人向けにネット投稿で「おばけ」「毒」などのおどろおどろしい語彙を使用し続けるのだろうか。20mSvも250mSvも安全だというなら、科学的根拠を医学ジャーナルに掲載してほしい。

過酷事故が継続中

 規制委員会と規制庁がミスリーディングな情報を流す理由は、福島第一原発の現状がまだ「過酷事故」の状態を脱しておらず、これからもずっと大量被ばくする状態だからではないか。3号機のがれき撤去作業によって大量放出があったことを報道する新聞各紙(2014年7月23〜24日)が「平常時の放出量は毎時1000万ベクレル」と報道していたのは重要な点である。

 2011年3月以降も福島原発からは常時大量の放射性物質が放出され続けていること、その量が1,2,3号炉合わせて、昼夜を問わず、つまり24時間、毎時10億ベクレル出ていることを、おしどりマコさんが東京電力に取材して回答を得ている(注58) [1]。この量はレベル4規模の事故が継続中ということになる。それがいつから毎時1000万ベクレルに下がったのかわからないが、5年近く経った今も1日に2億4,000万ベクレル、1年に876億ベクレル放出され続けているということだ。汚染水以外に空中に放出されている量だから、当然風向き次第で遠くに飛び、天候次第で降下する。しかも、マコさんの取材によると、2011年4月4日〜6日の間だけで、毎時2900億ベクレル、1日に6兆9600億ベクレル放出されていたという。この3日間だけで20兆8800億ベクレル放出されたことになる。それに加えて、2013年8月の3号機がれき撤去による、大量放出がある。事故直後でさえ天文学的数字だったのに、5年後の今は理解を超えた数値になっており、これが何十年も続くということを私たちは認識して行動しなければならない。

10mSvごとに白血病のリスク増大+長期間の低線量被ばくの方が危険という調査研究

 田中委員長が「年間20ミリシーベルトだから影響があるかどうかということについては、あまり定量的な実証データはないとは思いますけれども、国際的な専門家は、20ミリシーベルト以下であれば」安全と言ったのは、専門家として認識不足のそしりを免れない。『ネイチャー』(2015年7月2日)の「研究者たちが低線量被ばくのリスクを突き止める」(注59) [1]という記事で紹介されている研究「放射線モニタ作業員の電離放射線と白血病とリンパ腫による死亡リスク:国際コホート研究」(2015年7月)がある。素人には紹介記事の方がわかりやすいので、抄訳する。

 30万人以上のアメリカ・フランス・イギリスの原子力産業の作業員を調査した国際研究グループの結果は、平均1.1mSv/年の被曝量(2〜3mSvのバックグラウンド線量以外)で、線量があがるほどに白血病が増加し、この傾向は極端に低い線量でも同じだった。この発見によって、バックグラウンド線量でも高ければ、白血病を引き起こす可能性を示唆している。
 ICRPはすでに、年間被ばく量が6mSvを超える人のモニタリングをするよう呼びかけている。ICRPは[作業員の]5年間の年間被ばく量を20mSvに制限している。いずれの年でも最高被ばく量を50mSvに限っている。この研究でわかったことは、作業員の531人が白血病で死亡し、彼らが原子力産業で働いた平均27年の間に死亡したこと、この死亡数のうち30件は放射線が原因だったことだ。10mSvの被ばく毎に、白血病のリスクが上がることを示している。

 このデータはICRPの仮定―被ばく総量が同じ場合、1回の被ばくよりも、低線量被ばくの蓄積の方が白血病のリスクは低い(この根拠は、線量が小さく拡散されていれば、人間の体は回復する時間があるという考え方)―に挑む結果である。

 いくつかの疫学調査は放射線被ばくによる健康被害はがんだけでないことも示している。LARC率いる国際チームは心臓マヒや脳血栓などとの関係も調査中である。その他、低線量被ばくを長期間受けるとどうなるかの調査も進行中だ。ヨーロッパ9カ国から100万人を調査して、子ども時代にCTを受けた人たちの分析結果が2017年に完成する。ミュンヘンのHelmholtz Centerはマヤックウラン鉱の死亡した作業員の心臓の細胞を分析中である。欧州委員会は低線量被ばく研究に対する財政援助をずっとしてきたが、アメリカでは止まっていた。2013年に科学者たちがホワイトハウスのOffice of Science and Technologyに公開状を書いて、研究への財政支援を再開するよう求めた結果、「低線量被ばく研究法」が現在議会で審議中である。

食品基準値を1,000Bq/kgにせよと主張する田中委員長の発言の原点

 田中委員長が1,000mSv許容せよと示唆したこと、食品規制も2014年3月の段階から1000Bq/kgにせよと示唆していたのも、「過酷事故」が数十年も続くと知っているからだろう。記者会見で田中氏は「食品の摂取基準も私などは非常に疑問に思っています。ヨーロッパの10分の1以下ですね。何で10分の1に日本だけはしなければいけないのか」(注60) [1]と発言している。田中氏を含めた原子力推進者たちには、子どもだけでも避難させる発想などはなく、子どもの健康と命は原子力産業を続けるための必要なリスクということなのだろうか。ヨーロッパの1/10というのは田中氏の「不勉強」による発言ではなく、意図的な曲解だろう。

 田中氏の発言の原点は、2015年から放射線影響研究所理事長になった丹羽太貫氏が2011年に率いていた放射線審議会のようだ。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会で2011年に食品の暫定規制値(500Bq/kg)を、2012年度から一般食品基準値100Bq/kgに変更する審議をしていた。放射線にかかわることは、その基準が妥当であるか放射線審議会で審議し、答申する仕組みだったので、2011年12月27日開催の「放射線審議会第121回」(注61) [1]で審議が予定されていた。この議事録には原子力行政と原子力推進専門家たちの本質が現れているので、多くの市民・国民が読むべきだ。

市民・子どもの生殺与奪権は放射線審議会にあり?

 審議会長であった丹羽氏は会議冒頭から、食品衛生審議会の決定について説明するためにオブザーバーとして出席していた森口食品安全基準審査課長(当時)をつるしあげに近い形で糾弾した。会長のお怒りの理由は、新基準値の数字がメディアで報道され、「その内容が国民の中に広く知れ渡り、1つの合意事項になりつつある、これは法律違反だ、事前に報道機関に流したことは、放射線審議会の議論を非常にやりにくくする」ことである。そして丹羽氏は「何故、誰が、どのような形で情報漏洩を行ったか」と詰問した。市民・子どもの生殺与奪権は放射線審議会にあり、市民に知られてしまったら、基準値を上げろと要求しにくくなるじゃないかと激怒したと読める。

 課長は「食品の放射性物質の規制というのは国民の関心が非常に高く」、「農林水産省関係、文部科学省の学校給食の関係がある」、「食品衛生審議会が公開で開催されるため、放射線審議会に諮問するまでには数字は公表されていた」と、まっとうな説明をしたが、丹羽氏は「法律違反だ」をくり返す。2時間半の議論の最後に、平井昭司委員(東京都市大学名誉教授、原子核工学)は情報漏洩の問題を再度持ち出して、「謝罪文書を提出する必要がある」と迫った。市民に知らせるなという発想が、後に紹介するように、これらの議事録削除につながっているし、福島県民健康調査検討委員会の秘密会議などの行為につながっているようだ。

放射線審議会の本質

 この会議の議論から、放射線審議会の性質が食品衛生審議会の性質と全く違うことが見てとれる。要点を以下にまとめた。委員の役職名等は2011年12月当時のものである。

1. 現状の認識の違い

放射線審議会委員複数から厚労省食品安全基準審査課長へ質問
・ 「暫定規制値」と「現存被ばく状況」(原発事故の緊急状況後に高レベル放射線が環境に残っている状況)の定義は何か。[コメント:なぜ放射線防護の専門家が食品安全基準審査課長に尋ねるの?]

放射線審議会丹羽太貫会長(京都大学名誉教授 生物物理学)
・ 「1mSv/年で運用するのであれば、これはまさに計画被ばく状況[通常の原発運転時]の考え方であり、我々は理解しかねる」[コメント:ICRPの定義では「現存被ばく状況」の参考レベルは1mSv/年〜20mSv年だと官邸HP(注62) [1]に書いてありますよ]

厚生労働省食品安全基準審査課長の回答
・「事故後1年目以後における管理のために策定された食品規制値」
・「現存被ばく状況であり、計画被ばく状況ではない」
・「現存被ばく状況の1〜20mSv/年のうち、可能な限り低い線量で選択するという理解」

2. 汚染地の住民・非汚染地の住民・成人・子どもの区別について

丹羽太貫会長
・ 「我々が一番考えなければならないのは日本国民である。現存被ばく状況を超えざるを得ない方々に関しては、1mSv/年をどのように解釈すれば良いか」[コメント:避難させるべきでしょ? 危険を知った上で住み続ける人にはチェルノブイリのように賠償すべきです。日本在住の外国人は放射線防護の対象外?]

・ 「食品安全委員会が[生涯線量]100mSv以下は危なくなくて、その値以上は危ないということを宣言するものである。それを受けての1mSv/年であり、この規制値が通れば、実は日本国民で100mSv以上被ばくする方々とそうでない方の色分けがなされる。これは、放射線防護では避けなければならない。我が国は、国民を2色に分けては駄目である。これがある限りは放射線防護の基本にもとると言わざるを得ない」[コメント:だから日本全国の人に汚染食品を平等に食べさせようということですか。チェルノブイリのように、非汚染食品を汚染地に配布する発想はないのですか? 国中を被ばくさせるのが放射線防護の基本ですか?]

・ 「食品安全委員会の報告書を否定していただきたい」(生涯実被ばく量で100mSvを超えてはならないとした報告書を否定してほしい)

大野和子委員(京都医療科学大学医療科学部教授 医学博士)
・ 「これだけ低い数値ならば、安心のために乳児を半分にする必要はなく、大人と子どもが同じ数値で良い程度の数値あるとして安心していただくことに手間をかけるべきではないか」[コメント:この頃には素人でも乳幼児・子どもが放射線に敏感だから汚染食品を与えるべきではないと知っていたのに、医学の専門家が大人と同じに被ばくさせよと言う非道さ]

・ 「報告書[食品衛生審議会報告書]の中に、小児に関しては甲状腺がんと白血病のリスクが高いという記述があるが、放射性セシウムでは甲状腺がんにはほとんど寄与しない。もし、それが考慮に入っているならば、既に過大評価である」[コメント:セシウムも甲状腺がんに寄与する研究結果がチェルノブイリの例からもありますよ]

・ 「日本医学放射線学会では政府からの要請を受け、現地の方々との対話に数多く福島に出向いている。福島の農村地の方々はほとんど山で採ってくるキノコや山の食べ物を楽しみにしている現実がある。この基準が出たら、それは食べちゃいけないのかということになって、また無用な混乱を生む。厚生労働省の開催する説明会で丁寧に話すべき相手は、大都市ではなく、田園地区の放射能濃度の高い食べ物を食べている可能性のある方々」

下道國委員(藤田保健衛生大学客員教授)
・ 「乳幼児は影響が大きいからといっても、実際に母親と子どもは一緒に生活しており、分けて生活することはできない。そういうことも考えてきちんと、基準を合わせておくべきである」

厚生労働省食品安全基準審査課長の回答
・「食品の規制は、汚染地域だけではなく全国一律に規制をかける仕組みとなる」

3. 次に事故が起きた時

今村恵子委員(聖マリアンナ医科大学放射線医学講座客員教授):「今回に類したような事故が起きた場合に、緊急時と現存時で基準は変わると思う。その場合に、現在お考えの基準値は使えるものではない」「安全だからこの基準値でいくという説明がないと、今度、事故が起きた時に、これは使えない」。

甲斐倫明委員(大分県立看護科学大学環境保健学研究室教授):「暫定規制値は緊急時後の対応であり、放射線防護分野では[現在は]現存被ばく状況」「暫定基準は、事故時の基準であったわけであり、事故時の目安」「今般の事故以外の事故が発生した場合、全く無効になる」。

厚生労働省食品安全基準審査課長の回答
「別の事故が起きて、違う汚染が起こったということになれば、管理対象とすべき核種からもう一度考え直さなければいけない」

 放射線審議会委員たちの意見には言葉を失うものばかりで、厚生労働省食品安全基準審査課長の回答が最も理にかなっているように思える。各委員が「似たような事故が起こったら」を繰り返し、過酷事故が想定される認識を共有していることは明らかだ。そのいい例が、2011年8月4日開催の放射線審議会(第115回)での「緊急状況」か「現存被ばく状況」かの議論である。国民が「なぜその基準[緊急時用の暫定規制値]を日本国民全体として受け入れなければいけないということに対する、拒絶反応が起きている。そこを納得して、国民一人一人がそうだと思っていただくためには、放射線審議会声明のような形のものをつけていかないと、受け入れが難しいのではないか」(注63) [1]という意見表明がされた。放射線審議会の認識では6ヶ月後も1年後も「緊急事態」のままということのようだ。だからこそ、田中委員長の1000Bq/kg案が繰り返されるのだろう。

記録の消去について

 これら2011年の放射線審議会議事録を規制委員会ホームページから探っていて、去年までは過去のページから簡単に探れたのに、今年はなかなか探れず、漸く見つけたのが「国会図書館が2015年8月2日時点で取得保存した」サイト掲載のものだった。規制委員会が過去の議事録や会議資料を削除し、国会図書館が保存したということのようだ。もし国会図書館が保存していなければ、永久に失われ、市民には歴史的資料としても、証拠としても隠蔽されたことになる。

 この件を2015年2月18日開催の原子力規制委員会記者会見(注64) [1]で、『科学』の担当者が質問した。規制委員会のウェブページが変更になっているが、これまで公開されていた情報は全て公開するのか確認したいという質問だった。司会者は「基本的なレイアウトを更新した」だけで、情報を落としていることは「していないつもり」だと回答したが、「事務的にどうしても落とさざるを得ないようなものもあるのかもしれませんので、そこは申し訳ありません。(中略)ホームページの中の容量とかそういったものもありますので、期限が過ぎていたりとか、そういったものについて落とさざるを得ないという判断したものがあるかも知れない」と曖昧な文言を付け足した。

 このやり取りの後、田中委員長が『科学』担当者に対し「訳の分かんない質問ばかりで、あなたたまに来てね。それが岩波の雑誌科学のやり方ですか」と嫌みを言った。重要な議事録や会議資料を削除して、証拠隠滅を図ったと非難されてもおかしくないホームページにしたのは、田中委員長も承認済みの筈だ。

 田中委員長の回答に異議申し立てして、フリーランス記者が「委員長は科学はこういう雑誌、そういうやり方なんですかっていうこと固有名詞を挙げてですねおっしゃったんですが、こういう場でやはり評価を聞かせて低めてしまうような委員長がちょっと軽々しくいうのはどうかなと思うんですが。(中略)こういう場では控えられた方がよろしいのではないかと思うんですが」と諌めた。田中委員長は「お聞きしておきます。分かりました」と回答。

 この件と同じような事件が2015年10月10日に報道された。規制委員会が発足した2012年9月から3年半にわたり、行政文書の管理簿(リスト)を公開していなかったという。公文書管理法では、国民が情報公開請求しやすいよう、行政文書の名称や保存期間などを記載した「行政文書ファイル管理簿」の公開を義務づけているが、2015年10月の段階で、非公開となったままだ(注65) [1]

 規制庁と規制委員会による重要な事故関連資料や議事録の削除の動きと、福島第一原発事故の現場検証もないままに事故の証拠隠滅につながる廃炉作業、また、安倍政権による歴史否定や大学から文系(歴史を含む)を廃止する動きなど、すべてつながっているように見える。放射線科学や技術は、歴史的検証も歴史的資料保存もなく発展できるのだろうか。

安倍晋三氏のランセット掲載記事

 2015年12月12日号の国際医学ジャーナル『ランセット』に「安倍晋三」という署名で、「世界が平和でより健康であるために」(注66) [1]と題する文章が掲載された。被ばく地域に住まわされ続けている人々や避難地から帰還させられつつある人々にとっては、期待の持てるメッセージと読むべきだろうか。

 たとえば、次の点である。「日本は、『保健』を、人間の安全保障の中心的な要素と考えている」、「日本が国際保健分野で重要と考えているのは次の2点である。①公衆衛生危機に対応する体制を構築すること、②強靭で持続可能な保健システムの構築を、日本の経験と専門知識を活用することにより推進すること」「2016年のG7サミットを通じ、私はこれらの点の重要性を強調し、簡明で関連性の高い議論を促したい」。

 外国政府に対して「強靭で持続可能な保健システムの構築」を要請する前に、被ばくによる健康被害に対応する「保健システム」の構築を2016年G7サミットまでにはするのだと期待したい。安倍氏は2013年にも「我が国の国際保健外交戦略—なぜ今重要か―」(注67) [1]と、被ばく者である3.11後の私たちに期待を持たせる題名の記事を同じく『ランセット』に寄稿している。

 「女性などを含めた脆弱層を含む国民全体の健康改善」を訴え、アフリカでの「保健分野に20万人の人材育成を含めた500億円を投入することを表明した」「我が国は、国際保健の研究開発のためのグローバルヘルス技術振興基金という新たな支援モデルを立ち上げた。新たな技術は、すべての人の健康に生かされるべきである。世界経済の持続可能な発展に貢献していくため、このような国際保健課題の解決に向けた諸外国への援助を、日本政府は民間セクターと共に取り組む」。

 この「健康改善の取り組み」に日本の子どもたちや市民は入っているのだろうか。先に紹介した「世界原子力協会」のホームページには、「公衆を放射線源から守る4つの方法」として、「職業被ばくの場合、被ばくの時間を制限する」「放射線は放出源からの距離で減る」「ガンマ線は鉛、コンクリート、水などで防げる」「高濃度放射性物質は環境から隔離すること」である。原子力推進派にとっても、距離と時間で被ばくを防ぐことは常識なのだ。福島第一原発から毎時1000万ベクレルも永続的に降り注ぐ放射性物質から遠ざかることしか「健康を保つ」方法はないのだから、安倍氏が「保健システム」をおそまきながらでも構築して、G7サミットでリーダーシップを発揮してもらいたい。

 『ランセット』掲載のアピール文書(2015年12月12日)に「私は日本国総理大臣である。利害衝突がないことを宣誓する(I am the Prime Minister of Japan. I declare no competing interests.)」と署名したのだから、原子力産業を守るために、被害住民を切り捨てることはしないと世界に誓ったことになる。

注1:東京電力「<福島第一原子力発電所プランと状況等のお知らせ>(日報:平成25年8月12日 午後3時現在)」平成25年8月12日
http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/press_f1/2013/pdfdata/j130812a-j.pdf [5]

注2:東京電力「<福島第一原子力発電所プランと状況等のお知らせ>(日報:平成25年8月19日 午後4時現在)」平成25年8月19日
http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/press_f1/2013/pdfdata/j130819a-j.pdf [6]

注3:福島県放射線監視室「福島第一原子力発電所周辺のモニタリングポストにおける空間線量率の一時的な上昇について(第1報)」平成25年8月19日
https://www.pref.fukushima.lg.jp/download/1/20130819moni.pdf [7]

福島県HP「福島第一原子力発電所周辺のモニタリングポストにおける空間線量率の一時的な上昇」(掲載日2013年8月28日)に掲載されている。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16025c/genan218.html [8]

注4:福島県放射線監視室「福島第一原子力発電所周辺のモニタリングポストにおける空間線量率の一時的な上昇について(第2報)平成25年8月27日
https://www.pref.fukushima.lg.jp/download/1/20130827moni.pdf.pdf [9]

注5:牧野淳一郎「3.11以後の科学リテラシーno.27」『科学』2015年1月号, Vol.85 No.1, pp.0033〜0038.

注6:「セシウム濃度一時上昇 『放出源は原発』福島県が推定」『日本経済新聞電子版』
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO59011080Y3A820C1CR8000/ [10]

注7:「福島第1原発・廃炉阻む“高放射線”行程見通し立たず」『福島民友ニュース』2013年9月1日
http://www.minyu-net.com/osusume/daisinsai/serial/130901/news1.html [11]

注8:おしどりマコ「現在も1号機、2号機、3号機の格納容器の中から気体は漏れ続けてますねん」『おしどりマコ・ケンの脱ってみる?』2013年10月4日東京電力定例会見
http://daily.magazine9.jp/m9/oshidori/2013/10/123.html [12]

注9:「25年産米初の基準超」『福島民報』2013年10月9日
http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2013/10/post_8332.html [13]

注10:おしどりマコ「汚染水の話はめくらましだと思う」2013年10月20日 [14]

注11:「汚染水だけではないメディアが伝えない福島第一原発」『報道するラジオ』2013年11月1日対談の書き起こしが「みんな楽しくHappy♡がいい♪」に掲載されている。
http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-3380.html [15]

注12:東京電力「免震重要棟前ダスト濃度上昇及び身体汚染者発生に関する原因と対策について」2013年11月21日http://www.pref.fukushima.lg.jp/download/1/monibukai_131121_10.pdf [16]

注13:農林水産省「25年度米の南相馬市での基準値超過に関する調査結果」平成26年1月
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/fukusima/pdf/25kome_h26_01.pdf [17]

一連の資料が農林水産省HP「福島県南相馬市の25年産米の基準値超過の発生要因調査について」に掲載されている。http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/fukusima/index.html [18]

注14:農林水産省・福島県「南相馬市における玄米の全袋検査結果と基準値超過の発生要因調査」平成26年2月14日 http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/fukusima/pdf/genmai_h26_0214.pdf [19]

注15:「がれき撤去 セシウム飛散可能性 東電、地元に知らせず」『しんぶん赤旗』2014年7月16日 
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-16/2014071615_01_1.html [20]

注16:青木美希「がれき撤去で飛散、コメ汚染 福島第一の20キロ先」『朝日新聞デジタル』2014年7月14日 
http://archive.is/jVcAj [21]

注17:「原発のがれき撤去で水田汚染か」『NHK「かぶん」ブログ』2014年7月14日
http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/200/192922.html [22]

注18:おしどりマコ「南相馬の玄米に放射性物質が直接付着:その1『関係者の苦悩』」2014年7月15日 
http://ch.nicovideo.jp/oshidori/blomaga/ar577921 [23]

注19:「ガレキ撤去、50キロ先にもセシウム飛散か」『日テレNEWS23』2014年7月16日
http://www.news24.jp/articles/2014/07/16/07255324.html [24]

注20:寺島英弥「農業復興途上の南相馬市を襲った『原発粉じん』問題への怒り」『新潮社フォーサイト』2014年8月6日
http://www.huffingtonpost.jp/foresight/minami-soma_b_5653196.html [25]

注21:福島県・農林水産省「南相馬市における基準値超過の発生要因調査及びモニタリングの強化の実施状況について」平成26年7月18日
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/fukusima/pdf/monita_h26_0718.pdf [26]

注22:原子力規制委員会第25回「特定原子力施設監視・評価検討会」平成26年7月23日
東電資料 http://www.nsr.go.jp/data/000051128.pdf [27]
議事録 http://www.nsr.go.jp/data/000051186.pdf [28]

注23:牧野淳一郎「3.11以後の科学リテラシーno.33」『科学』2015年7月号, Vol.85 No.7, pp.0665〜0666.

注24:「放射性物質1兆ベクレル超放出・・・原発がれき撤去」『YOMIURI ONLINE』2014年7月23日 
http://www.yomiuri.co.jp/feature/TO000303/20140723-OYT1T50178.html [29]

注25:「がれき撤去作業 推計1兆ベクレル飛散」『東京新聞TOKYO Web』2014年7月24日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014072402000185.html [30]

注26:原子力規制委員会第26回「特定原子力施設監視・評価検討会」平成26年8月19日
東電資料http://www.nsr.go.jp/data/000051136.pdf [31]
議事録http://www.nsr.go.jp/data/000051187.pdf [32]

注27:原子力規制委員会第28回「特定原子力施設監視・評価検討会」平成26年10月31日
原子力規制庁資料 http://www.nsr.go.jp/data/000051154.pdf [33]
議事録 http://www.nsr.go.jp/data/000091647.pdf [34]

注28:原子力規制委員会第41回会議議事録(2014年11月26日)
https://www.nsr.go.jp/data/000091635.pdf [35]

資料2「3号機ガレキ撤去作業(平成25人8月)に伴う放射性物質の敷地外への降下量について」
https://www.nsr.go.jp/data/000086579.pdf [36]
参考資料:https://www.nsr.go.jp/data/000086580.pdf [37]

注29:小豆川勝見「福島第一原発3号機のガレキ撤去と南相馬市における再汚染の関連」『科学』2015年12月号、Vol.85 No.12, pp.11211125.

注30:「原子力規制委員会記者会見録」平成26年11月26日 対応:田中委員長
https://www.nsr.go.jp/data/000091170.pdf [38]

注31:「コメ汚染 がれき撤去が原因ではない」『NHK「かぶん」ぶろぐ』2014年11月26日
http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/200/204139.html [39]

注32:「がれき撤去でコメ汚染されず 昨夏の福島第1原発、規制委が実測値報告」『産経ニュース』2014年11月26日
http://www.sankei.com/affairs/news/141126/afr1411260018-n1.html [40]

注33:「南相馬市コメ汚染『がれき撤去と関連なし』」『日テレNEWS24』2014年11月26日
http://www.news24.jp/articles/2014/11/26/07264088.html [41]

注34:「南相馬コメ汚染 がれき影響可能性低い」『河北新報ONLINE NEWS』2014年11月27日 
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201411/20141127_63044.html [42]

注35:農林水産省・福島県「南相馬市における玄米の基準値超過の発生要因調査(平成26年12月1日)
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/fukusima/pdf/genmai_kekka_141201.pdf [43]

注36:農林水産省・福島県「南相馬市における玄米の基準値超過の発生要因調査—米の全袋調査結果及び基準値超過発生要因の調査結果とりまとめ(平成26年12月1日)」
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/fukusima/pdf/genmai_kousatu_141201.pdf [44]

注37:「原子力規制委員会記者会見録」平成26年12月17日 対応:田中委員長他
https://www.nsr.go.jp/data/000091179.pdf [45]

注38:南相馬市除染推進委員会委員長 児玉達彦氏発、南相馬市長 桜井勝延氏宛「南相馬市のコメ汚染と『平成25年福島第一原発建屋カバー解体・がれき処理により放射性セシウムなど規制された放射性物資を漏出した問題に関連する資料等について』(依頼)平成26年12月25日 http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/10,23071,c,html/23071/3-04.pdf [46]

注39:南相馬市除染推進委員会委員長 児玉達彦「田中俊一原子力規制委員長の記者会見発言への情報開示を受けての南相馬市除染推進委員長所感」平成27年1月12日
http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/10,23071,c,html/23071/3-05.pdf [47]

注40:農林水産省「基準値超過の想定される要因及びその対策」平成27年2月12日
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/fukusima/pdf/data_150212.pdf [48]

注41:農林水産庁・福島県報告書「南相馬市における玄米の基準値超過の発生要因調2015年5月26日」http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/fukusima/pdf/150526_youin_chosa.pdf [49]

注42:「汚染米の原因わからず 農水省」『朝日新聞デジタル』2015年5月27日
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11775501.html [50]
現在上記の記事は閲覧できなくなっているため、他の新聞での記事にリンク
http://blogs.yahoo.co.jp/fukushima_nuclear_disaster_news/35738941.html [51]

注43:「南相馬のコメ汚染原因特定できず 農水省」『共同通信47NEWS』2015年5月27日
https://archive.is/SExID [52]
(元の記事が削除されてしまったため、共同通信社が配信した同内容の記事を掲載した他新聞サイトページにリンク)

注44:「コメの汚染原因特定できず 南相馬で農家から不満、批判」『福島民友』2015年5月27日 
http://archive.is/oBAHT [53]

注45:「原子力規制委員会記者会見録」平成27年7月1日 対応:田中委員長他
https://www.nsr.go.jp/data/000112893.pdf [54]

注46:大塚卓也「福島第1原発事故 汚染米調査、再検証を 市民団体、南相馬市長に要請書」『毎日新聞』2015年8月20日 http://mainichi.jp/articles/20150820/ddl/k07/040/234000c [55]

注47:Georg Steinhauser et.al, “Post-Accident Sporadic releases of Airborne Radionuclides from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Site”, Environmental Science & Technology, DOI: 10. 1021/acs.est.5b03155, October 8, 2015.以下からpdfにアクセス可。
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.est.5b03155 [56]

注48:「第一原発『再臨界ない』 規制委員長、市長と会談」『福島民報』2015年10月23日
https://www.minpo.jp/news/detail/2015102326204 [57]

注49:「福島訪問の規制委田中氏『勉強しなさい』」『河北新報オンラインニュース』2015年10月24日 http://sp.kahoku.co.jp/tohokunews/201510/20151024_61064.html [58]

注50:「被ばく線量目標、国が設定せず〜原子力規制委員長」『OurPlanet-TV』2015年10月28日 
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1995 [59]

注51:「原子力規制委員会記者会見録」平成27年10月28日 対応:田中委員長他
https://www.nsr.go.jp/data/000128086.pdf [60]

注52:大塚卓也「福島第1原発事故 南相馬・汚染米問題 除染推進委員長、規制委員長発言を批判『現地を調査せず』」『毎日新聞』2015年12月25日
http://mainichi.jp/articles/20151225/ddl/k07/040/190000c [61]

注53:ICRP勧告翻訳検討委員会訳(2009)『ICRP Publication 103 国際放射線防護委員会の2007年勧告』社団法人日本アイソトープ協会 http://www.icrp.org/docs/P103_Japanese.pdf [62]

注54:”Nuclear Radiation and Health Effects”, World Nuclear Association, updated 22 May 2015,
http://www.world-nuclear.org/info/Safety-and-Security/Radiation-and-Health/Nuclear-Radiation-and-Health-Effects/ [63]

注55:Masahiro Ono, “Ethics should trump science in Fukushima”, BMJ 2011; 342:d3858,
http://www.bmj.com/content/342/bmj.d3853 [64]
日本語訳:「小野昌弘のブログ」に掲載 
http://masahirono.seesaa.net/index-10.html [65]

注56: 小野昌弘「放射能恐怖という民主政治の毒」シリーズは1〜14まで続いているが、(1)のURLだけ紹介する。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/onomasahiro/20150103-00041982/ [66]

注57:「小野昌弘氏の「放射能恐怖という民主政治の毒」を読んで高嶌さんの見解(2015.1.19)
http://togetter.com/li/771936

注58:「おしどりマコ・ケンの『脱ってみる?』第13回:情報とは、どの言葉を使うから洗脳が始まっている件」『マガジン9』2011年7月27日 http://www.magazine9.jp/oshidori/110727/ [67]

注59:Alison Abbott, “Researchers pin down risks of low-dose radiation: Large study of nuclear workers shows that even tiny doses slightly boost risk of leukaemia”, NATURE, 2 July, 2015.
http://www.nature.com/news/researchers-pin-down-risks-of-low-dose-radiation-1.17876 [68]

論文はKlevil Leuraud, et al. “Ionising radiation and risk of death from leukaemia and lymphoma in radiation-monitored workers (INWORKS): an international cohort study”, Lancet, vol 2, July 2015.
http://www.thelancet.com/journals/lanhae/article/PIIS2352-3026(15)00094-0/abstract [69]

注60:「原子力規制委員会記者会見録」平成26年3月4日
https://www.nsr.go.jp/data/000068738.pdf [70]

注61:放射線審議会(第121回)議事録、平成23年12月27日
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9483636/www.nsr.go.jp/archive/mext/b_menu/shingi/housha/gijiroku/1315028.htm [71]

注62:佐々木康人「放射線防護の最適化—現存被ばく状況での運用—」首相官邸災害対策ページ 
http://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g36.html [72]

注63:放射線審議会(第115回)平成23年8月4日における大野和子氏(京都医療科学大学医療科学部教授)の発言。議事録
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9483636/www.nsr.go.jp/archive/mext/b_menu/shingi/housha/gijiroku/1310487.htm [73]

注64:「原子力規制委員会記者会見録」平成27年2月18日 対応:田中委員長他
https://www.nsr.go.jp/data/000097513.pdf [74]

注65:「原子力規制委 文書管理簿を3年公表せず」『NHK「かぶん」ブログ』2015年10月10日 
http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/200/229147.html [75]

注66:Shinzo Abe, “Japan’s vision for a peaceful and healthier world”, the Lancet, vol.386, December 12, 2015
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(15)01172-1/fulltext [76]

外務省の日本語訳
http://www.mofa.go.jp/files/000117119.pdf [77]

注67:Shinzo Abe, “Japan’s strategy for global health diplomacy: why it matters”, 14 September 2013,
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(13)61639-6/abstract [78]

外務省が保存した原文のpdf版 
http://www.mofa.go.jp/files/000014304.pdf [79]
外務省の日本語訳 
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000014804.pdf [80]