ヴィクター・ボンド博士(Victor Bond: 1919-2007)
カリフォルニア大学(バークレー)で医学物理学博士号を取得した後、1945-1954年間、アメリカ海軍放射線防護研究所の所長を務めた。1954年からブルックヘブン国立研究所(米国エネルギー省の資金)で、核実験によって被ばくしたマーシャル諸島の人びとの治療にあたるチームの副部長を務めた。研究テーマは1回の高線量放射線による急性被ばくの影響と、放射線防護の科学的な基準作りだった。1990年にエネルギー省から放射線防護の科学的基準作りに貢献したとして功労賞を授与された。
出典:Stephen V. Musolino, “In Memoriam: Victor P. Bond”, Health Physics Society, http://hps.org/aboutthesociety/people/inmemoriam/VictorBond.html
ボンド博士は最初に、ブロス博士の調査結果および胎児に与える影響に関するデータはBEIRレポート審議会でも審議されたと述べた上で、以下を付け加えています。
ボンド:これらの調査結果をあなたは出版なさったが、批判されましたね。あなたが導き出した結論をそのデータは必ずしも証明するものではないという批判を私は知っています。また、そのデータからは別の結論も導き出せるのだと。
バーテル:ちょっと言わせていただきます。我々が扱うべきは意見ではなくて、確かなデータです。3州調査のデータだけでなく、出版されている広島長崎のデータや、その他の研究のデータです。その多くが、低線量被ばくの影響は説明不可能だと報告されていることがわかる筈です。この影響は高線量で悪化するものではないので、考慮されていないのです。
現在の[許容線量の]基準の証拠として引用されているデータすべてを新たな視点で検証する必要があると思います。私はこの基準は許されるものではないと思っています。
ジャブロン:今「確かなデータ」とおっしゃいましたが、放射線の人間への影響に関連する確かなデータはほとんど存在しません。人体実験するわけではありませんからね。
引用されている調査研究はすべて観察にすぎません。データを見て、そこから情報を絞り出すわけです。被ばくした人が他の人と、放射線以外の点で同じか、違うか、絶対にわかるわけないですよ。
胎児の被ばくについて、3州調査が、非常にいい研究だと認めますが、唯一の研究だなんてとんでもない。他の多くのデータ、たとえばリンデンバウムのデータからは反対の結論が出ていますよ。
ブロス:この会議全体に対して問題が出されたと思います。わたしたちの疫学調査に関して、この調査の外にいる方々が挑戦しているわけです。たとえば、日本の調査の場合、コントロール(対照)集団は10ラド(100mSv)以下のグループから採用されています。これこそ、私たちが議論していることです。100mSv以下の被ばく問題です。
私が指摘したいのは、私はこの分野だけでなく、他の分野でも、6本の主要な疫学的発見をしていますから、みなさん[会場の市民に対して]は疫学について私の話を信用するか、今お話しになった方の話を信用するか、つまり、この会議の基本をどこに置くのかの問題です。