ボンド:(ブルックリン国立研究所生命科学部副部長)
モーガン博士とエレット博士がおっしゃったことについて述べたいと思います。アメリカ放射線防護委員会(NCRP)と国際放射線防護委員会(ICRP)を代表して述べるわけではなことをお断りしておきます。データについてですが、放射線の基準は歴史的にNCRPとICRPの科学委員会の見解がベースになっています。これらの委員会は科学的データを評価してくれるベストの人たちに依頼しています。
この国ではNCRPが実行し、イギリスで国立医学審議会(MRC)が同じく行っています。[核実験の]フォールアウトが問題になっていた頃、イギリスの報告書が作成され、いわゆるBEAR(Biological Effects of Atomic Radiation 原爆放射線の生物学的影響)委員会が設置されました。1950年代の中頃のことです。
私が知る限り、言及されているように、BEAR委員会の遺伝的影響のレポートがその頃の基準設定に大きくかかわったのです。それがNCRPの一般市民用基準の勧告にかなり直接的に結びついています。実際の現場でも、この勧告は基準として非常に広範囲に使用されてきました。その頃入手可能なベストの遺伝的影響のデータをBEAR委員会の遺伝子グループが非常に注意深く検討して、30年間で10レム(100mSv)なら[放射線業務従事者が]仕事をする上での許容範囲の上限として「認めていい」と判断したのです。
これが発展して、医療用以外のすべての人為的放射線被ばくが30年間で5レム(50mSv)、年0.17レム(1.7mSv)となったのです。これが一般市民の許容線量として勧告されました。カール・モーガンがこの会議でおっしゃったことを、この委員会が明確に述べていることを申し上げたいと思います。つまり、基準として採用された数値はすべて上限値と理解されるべきこと、そして被ばくは実行可能な限り最低値におさえることです。
もちろん、これらの委員会はその時入手可能なベストのデータを使っています。その後の委員会の委員が任命されて、この情報は更新されてきています。主な点は放射線基準を設定するグループは入手可能な限りのベストなデータと才能[人間]を利用しようとしてきました。
バーテル:もしその勧告が1世代で10レム(100mSv)以上被ばくしないというなら、そこには別の仮定が含まれています。つまり、5レム(50mSv)は医療被ばくから発生し、したがって、もう5レム(50mSv)は産業被ばくによるという仮定です。この仮定は正しいですか?
ボンド:基本的に正しいですが、正確ではありません。正確な数値は、3,4レム(30, 40mSv)と残りは原子力エネルギーだと思います。そこから他のグループ用の勧告に発展しました。これは一般市民にも30年間、上限5レム(50mSv)を認めるべきだというものです。医療被ばく以外のすべての線源からの被ばくです。
バーテル:その仮定では、我々一般市民は、いずれにしろ、医療被ばくを年5レム(50mSv)受けるというものです。モーガン博士、さきほど、年73ミリラド(0.73mSv)が医療被ばくと想定されているとおっしゃいましたね。
モーガン:その数字は放射線医学局(Bureau of Radiological Health)の研究結果です。1969年にこのデータが検討されて、アメリカの平均的人間の全ボディへの医療被ばくは年73レム(730mSv)という数値を提案したのです。
バーテル:3州調査から得た数値をご紹介したいと思います。これは人びとが実際に医療用X線から受ける被ばくの数値です。10年間に受ける被ばく量です。
モーガン:失礼ですが、それは全ボディの数値ですか。
バーテル:歯科X線を含む医療X線で全ボディに受ける被ばく量です。
男性のコントロール群の10年間の平均被曝量は10.37ラド(104mSv)です。男性の白血病患者は13.47ラド(135mSv)です。女性の場合、コントロール群は11.7ラド(117mSv)、白血病患者は13.14ラド(131mSv)です。
30年間で10ラド(100mSv)の話をしているなら、医療被ばくだけですでに限度を超えてしまいます。保健教育福祉省(DHEW)のアメリカにおけるX線医療被ばくに関する1970年報告書には、一人あたりの平均線量が、私が見つけた概算によると、歯科を除いたX線外部被ばくは年642ミリレム(6.4mSv)でした。これを30年にあてはめると、これだけで19.26(訳者注 単位名がないが、ラドと理解すると、193mSv)になります。ですから、医療用X線を半分にし、歯科用X線を除外すると、30年間でだいたい10レム(100mSv)レベルになるのです。
シーレイン:アメリカ食品医薬品局FDA放射線医学局医務局
私たちは異なる臓器の線量を議論しているのです。基準は集団線量をもとにしています。特に30年間の遺伝線量で、一人あたりの遺伝有意線量に関する最新のレポートをもとに作られています。平均的有意線量は1970年時点で20ミリレム(0.2mSv)でした。
72ミリレム(0.72mSv)は腹部中間臓器の線量で、ホールボディー被ばく線量では全くないです。あなたが引用した線量は皮膚の被ばく線量のようです。ですから、2,3種類の異なる臓器について話しているようですね。遺伝有意線量はボンド博士が引用した出版物で言及されているもので、そこに20ミリレム(0.2mSv)と書かれています。
バーテル:170ミリレム(1.7mSv)のことは? ホールボディーの線量じゃないですか?
シーレイン:それは医療放射線を除いた数値です。
バーテル:これはホールボディーです。外部被ばく線量じゃないですか? 生殖腺ですか?
シーレイン:ホールボディーまたは骨髄の年間線量です。これは吸収線量で外部被ばく線量ではありません。それに、限度は数の上では等しいですが、臓器への線量は臓器ごとに違います。これはホールボディーまたは生殖腺です。限度は同じと算定されています。生殖腺への5レム(50mSv)は30年間で170レム(1700mSv)です。人口の適切なサンプルでは、一人につきホールボディー線量0.5レム(5mSv)は年間およそ170ミリレム(1.7mSv)です。
バーテル:それは5レム(50mSv)を分割した数字です。それは広がらず…(訳者注 話し始めてシーレイン博士にさえぎられる)。
シーレイン:医療被ばくを除外しています。
バーテル:あなたがおっしゃっている5レムの一部がなぜ生殖腺なのか、それが医療用X線と関係しているというなら、なぜ残りの5レムが全ボディの線量なのかということを理解しようとしているんです。
シーレイン:そんなことは言っていません。現在の放射線基準は医療用放射線を除外していると言ったんです。それが最初の点です。
私の2番目の主張点は、この基準が依拠した研究は、全体の線量を査定する時に計算された時点では、医療用放射線も含んでいたということです。最後に遺伝有意線量は年20ミリレム(0.2mSv)ということです。あなたが引用した線量は個々の規定(procedure)用の線量のようで、臓器の線量ではなく、皮膚の線量のようですね。