モーガン:最後の課題にいきたいと思います。最後の課題について、パネルに質問しなければなりません。低線量被ばくから公衆と作業員を守るために、どんな勧告や立法措置を、この特別議会聴聞会に提案しますか?
ブロス[国立がん研究センター生物統計学部長]:[今までの議論を要約すると]低線量被ばく、特に不必要な低線量放射線への被ばくに対してアメリカの公衆を守るための公衆衛生対策が即刻必要なことを正当化するしっかりした科学的証拠は十分すぎるほどあります。これらの証拠は蓄積した遺伝子凝集体(accumulated genetic aggregation)の害を証明するものです。
医学分野では被ばく量を10倍減らすことは可能です。今までたびたび使われてきた安い工業用X線フィルムのかわりに、高品質のフィルムを使うことを義務づけたり、その他多くのテクノロジーで被ばくを減らせるのです。医療用X線による公衆への被ばくを10倍も減らすことができるテクノロジーがあるのです。この点で反論はほとんどありません。やっていないだけです。
原子力の分野では、現在の年5レム[50mSv 作業員の制限値]というレベルはすぐに下げるべきで、10倍も下げることが即刻できると、今日、何度も聞いてきました。このテーブルの人たちとおしゃべりしていて私が一つ学んだのは、この削減は規制当局の人たちの数人には非公式に受け入れられるものだということです。彼らは自分たちの所属機関の公式見解とは反対の見解を持っていて、現在進行中のものがあるけれど、長引いているということです。
3つ目の提言は性質の違うもので、大変革に思えるかもしれません。簡単に言うと、私が考えてほしいと思っているのは、テクノロジーによる殺人を刑事犯にすべきだということです。テクノロジーを使って他人を殺すような愚かなことをする人たちを2,3年刑務所に入れるべきです。化学物質を環境にまいたり、不必要な放射性物質を環境に放出したら、化学者、ビジネスマン、規制当局のメンバーとして刑務所に2,3年ぶちこまれるかもしれないと考えたら、この人たちは考え直すでしょうから、これほどいいことはないし、この方法は健康にいい効果をもたらすと思います。
モーガン:ありがとうございます。次にバーテル博士のご意見を伺います。
バーテル:ブロス博士のご意見に賛成です。私も提言を紙に書いていますので、これを提出してもよろしいでしょうか?(補遺参照)コピーがほしい方の分もあります。ここで申し上げたこととほとんど同じですが、私の提言を要約したものです。
私がお話ししたいことは、態度の変化です。私は何百万ものアメリカ人を代表して話していると思いますが、お願いしたいのは、人間がどれほど虐待に耐えられるかを言うのではなく、人間に何ができるか、まだ未開発の資源としての人間がどんなにすばらしいかを見直してほしいのです。
問題を査定しようとする時に、GNP(国民総生産)よりも生活の質を優先すべきだとお願いしたい。エネルギーよりも健康を優先すべきだとお願いしたい。人間は急がない方がずっといいのです。瞑想的なライフスタイルになった方がずっといい状態になります。こんなに多くのエネルギーは必要ありません。エネルギーは私たちの生活レベルを改善しません。(付録参照)
モーガン:スターングラス博士はどうですか?
スターングラス:議会が人口調査を義務化するよう強く要請したいと思います。この人口調査は1963年に合同委員会で提言されたのですが、実施されませんでした。この調査をEPA(環境保護局)の主催で、ベストな統計方法を使って、独立系グループと大学によって実施するべきです。その資金は必要なら、緊急問題である被ばくの影響研究とは直接関係ない種類の研究費から捻出すべきです。
議会は更なるヒヤリングを設けて、動物と大規模な人口調査、非常に低い線量と線量率に関する研究調査が実施されるようにすべきだと信じます。なぜなら、これらの調査が現在、適切に行われていないようだからです。人間の被ばくに関する我々の現在の経験が適切に評価されているのか、この分野の更なる研究と発展に対して税金が充当される前に、議会はこれらのことを知る権利があります。
さらに、これらの研究は世界中のフォールアウトにも焦点を当てるべきです。いろいろな原子力・核施設の周辺の健康影響のパターンについても研究されるべきで、これは議会が最優先事項として義務づけるべきです。
また、議会で調査すべきことは、なぜこれらの影響が今まで調査されてこなかったのか、なぜこの分野では、研究費や自分のポストを失うという恐怖なしには研究できないという科学者ばかりなのかです。この調査は重要だと思います。この分野全体の秘密主義の問題は、CIAやFBIなどの諜報機関に関して私たちがようやく最近知った問題の大きさに匹敵すると思います。私が心から懸念していることは、人命を救う助けとなる情報を持っている多くの科学者たちが出版を妨げられ、公開することを妨げられていることです。このような調査は本当に実施されるべきです。私たちが扱っている環境中の物質は目に見えず、匂いもせず、感じることもできないものだからです。このエネルギー源をどう扱うかという社会的問題を解決できないなら、社会の将来を犠牲にしてまで使うべきではないと信じています。
モーガン:ありがとうございました。マーテル博士?
マーテル[アメリカ大気研究センター研究員]:今日私たちはBEIRレポートが時代遅れなうえ、ある重要な問題を考慮していないことを聞きました。他の何よりも、BEIR委員会を再度招集して、まだ触れられていない重要な問題を検討するよう提案します。
まず第一に、「ホット・パーティクル」のリスクの現在の評価に関して、私の理解では、BEIR委員会の委員たちは様々な反応があるようです。もちろん、意見が一致していません。また、検討してもらいたいのは、私の「暖かいパーティクル(warm particle)」仮説と多重突然変異プロセス(multiple mutation process)が提起する問題です。私がさきほど申したように、もし多重突然変異がかかわってくると、アルファ線放出体(alpha emitter)は一つの寄与因子になるだけでなく、細胞突然変異とがんの主要因子になるのです。BEIR委員会はこの証拠と、多重突然変異仮説とプロセスが引き起こすことを検討すべきです。さもないと、線形仮説(linear hypothesis)のようなあまりに欠陥がありすぎて正気じゃないような仮説をもとにして、将来世代のための重要な決定をしていることになります。
最後に、BEIR委員会やその他の組織がアルファ線放出体に限りませんが、特にアルファ線のような、生殖腺の中の内部被ばく放出体の微小分布(microdistribution)を考慮するのが遅すぎる、即刻考慮すべきだと提案します。特に精子と卵子を調べるべきです。なぜなら、この重要な場所にポロニウムとプルトニウムがより多く集まるという徴候がすでにあるからです。見つけさせてください。
私が心配する2つ目の分野は現在もっと明らかになりました。この国におけるがん研究は化学物質とウィルスの因子に限って強調されていて、放射線に対する適切な注目がなされてきませんでした。放射線が人間の突然変異とがんを誘発する因子であることは疑う余地はありません。この分野がこの国のがん研究のうちの2,3%あるいは、それ以下しか行われていないわけですが、私にはそれ以上の研究努力が払われるべきだと思えます。
この点で、国立がん研究所が放射線由来のがんの大規模研究プログラムをずっと前に設立すべきだったと思います。このようなプログラムの中では、高リスク・グループの腫瘍部位におけるアルファ線内部放出体の微小分布の研究に優先権が与えられるべきです。(付録参照)
ありがとうございました。
モーガン:エレット博士、コメントがありますか?
エレット:ありません。
モーガン:閉会まで1,2分あります。
カルディコット:私の提言は(1)医療被ばくは下げるべき、X線の放射線量はX線に表記し、一人一人の放射線量の合計が一覧できるようにすることを条件化すべきです。
(2)原子力を続けることによる医学的危険性に関する公式の議会ヒヤリングを開催すべきです。
(3)遺伝子メカニズムと放射線がもたらす結果、リスク・ベネフィットの要素について公衆を教育する正式の政策が必要です。現在世界中の政府ががん、白血病、先天性疾病を治す方法を探すために何百万ドルもかけています。それなのに、同じ政府が原子力産業と核兵器に何億ドルも使っていますが、これが様々な病気を激増させる直接の原因なのです。
(4)原子力が安全だと証明できるまで原子力を止めるべきだと提言します。
(5)この国およびその他の国が原子力発電所を輸出することを止めるべきだと提言します。原子力は核兵器の激増/拡散に直接結びついていて、地球上の生命体の未来を脅かします。
モーガン:そこの男性。
チャールズ:ニュージャージーの市民として結論を申し述べたいと思います。ニュージャージーは現在、この国で最も高いがん罹患率で、傑出した地位にあることは疑いありません。私たちが非常な恐怖を感じていると、はっきり申し上げられます。ニュージャージーの医学の専門家代表として、そして市民代表として、アトランティック・シティー(Atlantic City)に新しい原子炉を設置するという計画(訳者解説)に、私たちはとても心配しています。この発電所は第一世代テクノロジー(first-generation technology)として指定されています。この地域に安心して平安に住めるのかという保障は、規制当局からは一切ありません。
ですから、ドクター・カルデコットがおっしゃったことを支持し、さらなる原子炉のモラトリアムをお願いします。ニュージャージーではこれ以上がんを増やしたくないのです。今日明らかになったことは、答え[がん増加の理由]がないということなので、その解答が得られ、さらなる研究の必要性について十分な同意が得られるまでは原発のモラトリアムが必要です。私たちは統計になりたくありません。
ありがとうございました。
モーガン:今日のディスカッションに参加して下さったパネリストと聴衆のみなさんにお礼申し上げます。会議を閉会いたします。
(これをもって、午後5時に会議は閉会した)
付録
低線量被ばくの影響に関する推奨文献目録
*pp.113〜124に、合計155編の論文、報告書が記載されている。
出典:Matt Novak “The American Plan to Build Nuclear Power Plants in the Ocean”, Smithonian, Feb.26, 2013
http://www.smithsonianmag.com/history/the-american-plan-to-build-nuclear-power-plants-in-the-ocean-27801262/?no-ist