13 (7) 甲状腺がん増加を心配し検査の継続を日本政府に訴えた国際学会

2016年3月時点で福島の子どもたちの間に172人も甲状腺がんがみつかっています。国際環境疫学会は甲状腺がんの増加に懸念を表明し、がんの早期発見・早期治療のために検査が必要で継続すべきだと、日本政府・環境省に書簡で訴えました。その回答でしょうか、福島県立医大は甲状腺がん検査に来なくてもいいというキャンペーンを始め、「県民健康調査検討委員会」は検査対象者の縮小を計画しています。

国際環境疫学会から日本政府へ提言

 福島「県民健康調査」で2016年3月までに発見された子どもたちの甲状腺がん及び手術待ちをしている悪性疑いを合わせると、172人に増えている。2015年10月に岡山大学大学院環境生命科学研究科の津田敏秀教授らの論文「18歳以下の福島県住民の超音波による甲状腺がんの検出:2011〜2014年」(注1)が国際環境疫学会の『疫学』に掲載された。2014年12月31日までの結果(甲状腺がん110人)を疫学的に分析し、「小児および若年層の甲状腺がんの症例数が約30倍に増加することが認められた」という。

 早く対応しないと大変なことになると危機感を持つ津田氏は2015年10月8日に「日本外国特派員協会」で記者会見をし、県民健康調査検討委員会の「多発はスクリーニング効果のせい、過剰診断だ」という主張について、「スクリーニング効果や過剰診断によってどのくらいの偽の多発が起こってくるのか。せいぜい2〜3倍、あるいは6〜7倍という一桁のデータ上昇しかないわけです。ところが福島県では20倍から50倍の多発が起こっている」と批判した。

 津田氏の記者会見について報道したネット・ジャーナル『リテラ』は、「原発事故の健康被害をできるだけ少なく、いや出来れば皆無にしたい日本政府に対して、医学的、科学的、データ的見地を主張するどころか、ひたすら追随する現在の医学界への批判でもある。医学界もまた政府、電力会社の意向に従順に従い、利権の温存を目論む”原発ムラ”の一員だったことが改めて証明されたともいえる」(注2)と評している。津田氏の記者会見が「日本外国特派員協会」で行われたことや、このような重要な内容について日本のメディアが報じないのは、記者クラブ制度も大きく関わっているのだろう。日本の大手メディアが「国民の知る権利」を無視し、「取材対象と癒着した不健全なジャーナリズム」となっていることを国連人権理事会の特別報告者、デビッド・ケイ氏が批判したが、日本ではほとんど報道されない(注3)

 2016年1月22日に国際環境疫学会は日本政府(環境大臣・環境省環境保健部長・福島県県民健康調査課長)に書簡を送り、甲状腺がんの増加に懸念を表明し、がんの早期発見・早期治療のために被ばくした集団に対するスクリーニングが必要で継続すべきだと、津田氏らの研究が示していると述べている。そして「事故の後も環境中に残存している可能性がある放射能への曝露を詳細にモニターすることは(中略)必須である」と明言して、国際環境疫学会は調査活動を手助けする用意があるので、「この重要な課題についてのあなた方の計画を聞くことができれば幸いである」と結ばれている。国際環境疫学会からの書簡を翻訳・紹介したのは、「こどもたちを放射線障害から守る全国小児科医の集い・実行委員会」(注4)である。この書簡に対し、環境省放射線健康管理担当者は「書簡が求める継続的な調査などは既に実施している。福島での甲状腺被ばく量はチェルノブイリ原発事故時よりかなり少なく、現時点で影響は考えにくい」と話し、支援を断った(注5)

国際環境疫学会に挑戦する福島県立医大と原子力ムラの住人たち

 津田氏の論文が発表される前から、甲状腺がんの多発はスクリーニング効果のせいで過剰診断だと主張する県民健康調検討委員会と甲状腺検査評価部会の委員たち、その他の専門家たちがいたが(本サイト6—4参照)、津田論文の公開後、特に国際環境疫学会から日本政府に対する警告と提言の書簡が公開されてから、彼らの反論が次々と出されている。目についたものを時系列にリストにしてみる。

  • 2016年2月5日:福島県立医科大学・ふくしま国際医療科学センターがHPで「津田敏秀博士らの論文の方法の誤りを指摘したLetterが「Epidemiology」誌電子版に掲載されました」(注6)と、福島県立医大教授8名の400字の英文Letterを紹介している。
コメント:津田論文の「解析手法の誤りを指摘した」「甲状腺がんは一般的に進展が遅い」と何度も強調しているが、2014年6月30日時点で手術された子どもたちの甲状腺がんの74%に転移が認められており(津田論文でも指摘された。注7)、鈴木眞一氏の報告(注8)では2015年時点で92%に転移が認められたということだから、「進行が遅い」という福島県立医大の2016年の文言は虚偽ではないか。
 津田氏は『科学』2016年8月号で、このLetterを含めた津田論文に対する反論について、疫学の理論について「ご存じないかもしくは実感を持っておられないようだ」「反証は行われておらずほとんど試みすらされていない(データが福島県発表分にもとづいているので反証のしようがないからであるが)」(注9)と述べている。
  • 2016年4月:安東量子「原発事故後の[福島での]生活を取り戻す」『臨床腫瘍学』(注10)
コメント:専門家でない福島県の一般市民の文章を国際医学専門誌が掲載するというのは異様だ。その上、『臨床腫瘍学』のオンラインページに、「R.安東はEthos in Fukushimaの代表である。この団体についてはこの団体のウェブサイトへ」と書かれ、この市民団体にリンクされている。安東氏が事故直後からICRPのジャック・ロシャール氏(20ミリシーベルト推進派)と連携しながら活動している(ETHOS IN FUKUSHIMAブログからわかる)点で、被ばく被害はないというスタンスと理解できる。
  • 2016年5月:高村昇「福島における若年者の甲状腺がん」『疫学』掲載(注11)。津田論文への反論として、福島の子どもたちの被ばく量がチェルノブイリより少ないこと、5歳以下が少ないこと、他県の検診結果と変わりないことから、多発ではない、被ばくの影響ではないという含みの短文である。
  • 2016年5月26日:山下俊一「福島原発事故後の若年者の甲状腺がん−−スクリーニングの影響か本当の増加か?−—」(注12)、アメリカ臨床腫瘍学会の年次会議のHPに掲載。
  • 2016年7月18日:越智小枝、加藤茂明、坪倉正治、クレア・レポード、上昌広、渋谷健司「福島からの声:疫学者の責任は福島の子どもたちに対する理不尽な非難を避けること」『甲状腺』(注13)。概要には「津田氏らの論文について述べる。福島で働く医師と研究者として、我々はデータのあのような偏った解釈は福島の子どもたちに対する非論理的な非難を起こす可能性があると警告する」と書かれている。
コメント:この人々こそ、「疫学者の責任」が何か分かっていないか、「偏って解釈」しているようだ。
  • 2016年8月:高村昇、折田真紀子、ウラジミール・サエンコ、山下俊一、長瀧重信「放射線と甲状腺がんリスク:福島とチェルノブイリ」『ランセット:糖尿病と内分泌学』(注14)

 以上、2016年に入ってから津田氏らの論文に対して根拠のない反論が毎月のように国際科学雑誌に掲載されるというのは尋常じゃない。国際環境疫学会からの日本政府宛の書簡に接して、尋常じゃない心理状態になったのか、福島原発事故による被ばく問題はないと国際社会に向かって発信せよという指令が出ているかのようだ。

欧米では100万人に1人以上の追加リスクが生じたら防護措置をとる

 上記リストの2016年5月までの反論に対する反反論の意味だろうか、国際環境疫学会が更に公開書簡(津田教授宛という形式で)を5月6日に発表した(注4)。そこには「アメリカとヨーロッパの規制当局は、100万人に1人という僅少な生涯追加リスク(de minimis)を越える推定リスクレベルに達した段階で防護措置をとり始めます。このリスクを生じさせうる被ばく量は、100mSvをはるかに下回っています」と書かれている。そして、被害拡大を防ぐためには「全ての関係者と最大限の協議をして、最高の透明性を保つことです」と忠告し、聖徳太子の教え(重大な事柄を議論するときは、判断をあやまることもあるかもしれない。そのときみんなで検討すれば、道理にかなう結論がえられよう)を引用して締めくくっている。津田論文に反論する専門家たち、環境省、安倍政権に聖徳太子の教えが通じるだろうか?

 国際環境疫学会が山下俊一氏以下、上記リストの「専門家たち」を諭しているのは明白だろう。欧米では100万人に1人以上の追加リスクを越えた段階で防護措置を取るというのに、上記専門家たちは数十倍でも「増加」ではないと主張し続ける。2016年6月6日発表の福島県の受診者数と甲状腺がん検出数の比率では、悪性率が上昇している郡山・伊達・南相馬・福島の4市で、2317人に1人の甲状腺がんが見つかっている(注15)というのは、ただ事ではない。

100mSv以下は安全という山下俊一氏と仲間・弟子たちの嘘

 健康被害を起こす被ばく線量について、「このリスクを生じさせうる被ばく量は、100mSvをはるかに下回っています」と国際環境疫学会が述べているのも、Mr.100mSvと呼ばれた山下氏とその周囲の「専門家」たちの発言への警告・反論だ。年間100mSv以下は被ばくの健康被害が出ないという発言は、福島県立医科大学発行の山下俊一(監修)『福島県放射線健康リスク管理アドバイザー山下俊一先生が答える 放射線Q&A』(注16)で強調されている。その上、「1時間当たりの環境線量が10マイクロシーベルト(その後3.8マイクロシーベルト)以下であれば子どもを外で遊ばせてもいいと書いてある。10μsv/hは87,600μSv/y、つまり年間87.6ミリシーベルトの空間線量地域でも子どもを外で遊ばせていいと言っているのだ。

 このパンフレットの内容は、年間100mSv以下なら死ぬまでこの量を被ばくし続けても安全だと誤解させる。つまり、年間99mSv、70年寿命として生涯6930mSvまでは健康被害が出ないと言っていることになる。しかも、「同じ100という線量でも、1回で100受けるのと、1を100に分けて受けるのとでは影響がまったく違います。少しずつならリスクははるかに少ないのです」と述べている。低線量を長期間にわたって被ばくする方が被害が大きいと、1976年アメリカ議会セミナーで論じられたことを思い出してほしい(4—1参照)。それに対し、2011年11月の講演会で国際医療福祉大学教授・鈴木元氏が山下俊一氏同様、「原発事故による放射性降下物からの被ばくは、ゆっくりとした被ばくで、リスクは小さい」と公言している(注17)

 2016年5月26日発表の山下俊一氏の論文「福島原発事故後の若年者の甲状腺がん−−スクリーニングの影響か本当の増加か?−—」(アメリカ臨床腫瘍学会の年次会議HP掲載)は虚偽と隠蔽に満ちているが、その1つが次の文章だ。彼が放影研の論文から引用している体裁なので、原典と並べて比較する。

山下論文:it [the report] also noted that in the dose range of 0 to 150mSv, the excess risk of solid cancer is not statistically significant, especially below 100mSv.

山下論文の私訳:それ[放射線影響研究所の寿命調査(Life Span Study)の最近の疫学調査]が示したことは、0〜150mSvの線量範囲では固形がんの過剰リスクは統計学的に有意ではない、特に100mSv以下では有意ではないことだ。

放影研の論文:The estimated lowest dose range with a significant ERR[過剰相対危険度/リスク] for all solid cancer was 0 to 0.20Gy, and a formal dose-threshold analysis indicated no threshold; i.e., zero dose was the best estimate of the threshold.(注18)

放影研による日本語訳:全固形がんについて過剰相対危険度が有意となる最小推定範囲は0-0.2Gy[0-200mSv]であり、定型的な線量閾値解析(線量相応に関する近似直線モデル)では閾値は示されず、ゼロ線量が最良の閾値推定値であった。(注19)

放影研報告書第14報をめぐる異変

 放影研報告書第14報は福島原発事故による被ばく影響を心配する科学者・医師たちには、報告内容はそのまま引用されたが、被ばく影響を隠蔽・過小評価したい「専門家」たちは無視するか、正反対に解釈した。

 武田邦彦氏は2012年4月30日に「被爆と健康:決定版!!・・・広島・長崎の被爆論文が出ました」(注20)と紹介している。その中で、「本来ならこの論文は毎日のようにテレビ、新聞で報道され、解説されているはずですが、論文内容が『政府に都合が悪い』ということで、ほとんど報道されていません」と述べ、政府にとって不都合な点を挙げている。

  • 閾値(これ以下なら安全)がないこと
  • 低線量でも「被曝量と病気の発生」には比例関係が認められること(直線近似が成立すること)
  • 20mSvで子どもががんになる可能性は100人に2人程度と高率になること

 放影研の報告書内容はその後広く知られるようになり、福島県以外で汚染度の高い茨城県民がこの報告書を引用して、茨城県に対して茨城の子どもたちの健康調査をしてほしいと要望した。茨城県保健福祉部保健予防課の「県民の声」ページに掲載されている(注21)。市民は、放影研の論文を引用して「全線量域においてがんのリスクがあり、閾値がない」等の点をあげた上で、以下のように述べている。このページが削除される可能性があるので、主要点をそのまま引用する。

市民の声(2012年6月24日)
 福島原発の事故当時、放射線に関する教育を全く受けずに成長した私たちはその危険性について余りにも無知であり、その結果、未来を繋ぐ子供達を被曝という危険に晒してしまいました。その子供たちの大切な未来を、少しでも安心で安全なものにしていくためにも、いつ出るか分からない国の統一的な見解をじっと待つだけでなく、健康調査を早急に行っていただけることを、強く希望いたします。
茨城県保健福祉部保健予防課の回答(2012年7月11日)
 その[当該論文]内容について直接研究者に確認したところ、「論文は和訳したもので誤解を招いている。100mSv以下の低線量域まで有意なリスクがあると認めた論文ではない。」との説明を受けました。
 なお、同研究所では、5mSv以下の低線量被爆者では、がんやその他の疾患で過剰リスクは認められないと発表しており、それは今も変わらないとのことでした。
 現時点において今回の原発事故における本県の被ばくの状況は、空間線量率の事故後一年間の積算で5mSvを超えるような地域はなく、県としましては、事故当初から、こうした状況を十分考慮したうえで、放射線被ばくの専門の意見を参考に、放射線の健康影響について検討を行い、健康調査は現時点で必要ないと判断しているところでございます。

 放影研の報告書の第一執筆者・小笹晃太郎氏(放影研疫学部長)は論文の和訳が誤解を与え、論文には「100mSv以下で有意なリスクがあると認めていない」と言ったそうだが、上記の英文論文からの抜粋部分は和訳部分と全く同じだから、論文に書いたことを自ら「認めていない」ということなのだろうか? しかも、茨城県からの問い合わせに対して、5mSv以下はリスクはないと答えたようなので、ますます疑問がわく。

 小笹氏らは1年後の2013年6月10日に論文概要の和訳の改訂版を公開し、「リスクが有意となる線量域は0.20Gy[200mSv]以上」(注22)
と修正した。しかし、英文を修正したわけではないだろうから、日本国内向けには200mSv以下はリスクはない、国際的には0〜200mSvでも有意なリスクありと言っていることになる。この研究者たちと放影研は自分たちの発言によって、多くの子どもたちが健康調査されずに甲状腺がんが進行したまま放置され、取り返しがつかないことになったらどう責任を取るのだろうか? 自治体は県民、特に子どもたちの健康と命を軽視するために、これらの専門家たちを使っているのだろうか?

 小笹氏の改訂版から半年たった、2013年12月21日に開催された「放射線の健康影響に関する専門家意見交換会—甲状腺について—」(環境省・福島県主催)では、津田氏のプレゼンに対して福島県の「各市町村のアドバイザーからは反発する意見が殺到」したという。しかし、「100ミリシーベルト以下でもがんの増加は起きる」という点は委員の見解が一致したという(注23)。これで今でも100mSv以下はリスクはないという政府・行政・自治体・「専門家」たちが何を目指しているかが明らかになったのではないだろうか。

早期発見・早期治療のがん対策は無意味だから甲状腺がん検査を縮小する?

 上記のような経緯があったにもかかわらず、2016年5月26日発表の山下俊一氏の論文では100mSv以下ではリスクはないと国際社会に対して虚偽を述べた。上記リストにあげた、山下氏と仲間の専門家たちの論文はその他の虚偽と隠蔽に満ちている。甲状腺がんの異常増加の一因が安定ヨウ素剤を服用させなかったことにあることには一切触れていない(福島県放射線健康リスク管理アドバイザーだった山下氏、放射線医学総合研究所などが配布・服用を阻止した経緯について8—5—3を参照)。また、甲状腺がんが発見された子どもたちの転移率が高いことにも触れていない。

 山下氏の論文で更に気になるのは、がん増加によって親や市民の不安と心配が増加するだけで、見つけなくてもいい過剰診断の原因である超音波検査をやめようという含みが述べられている文章だ。「県と中央政府の目覚しいヘルス・ケアプログラムからもっとメリットを得るだろう。県と中央政府は将来の医療ニーズとフォローアップ・プログラムをもっとはっきりとした目的意識をもって定義して、リソースを振り分けるかもしれない」という曖昧な文章が何を意味するかは、この論文からではわからないが、8月になってから表面化してきたことから、山下氏が甲状腺がん増加を隠すために、超音波検査の中止か縮小を提案していると読み取れる。

 『科学』8月号に掲載されたOurPlanet-TVの白石草氏の「『過剰診断』論の背後で何が起きているのか?」によると、福島の子どもたちに送られる「3巡目の検査通知には、検査の受診を躊躇させるような文言が加えられていて、「住民からは、『受診率を下げようとしているのか』との声が上がっている」(注24)という。白石氏は更に、「受けない意思も尊重」されるべきだと子どもたちに出前授業している福島県立医大放射線健康管理学講座の緑川早苗准教授を紹介する『福島民友』の記事(注25)に言及している。確かに「なぜ行っているか分からない検査を受けて、まれにがんと宣告されるような理不尽さを、そのままにしておいていいのか」と始まる記事は「理不尽さ」の原因と責任の所在を曖昧にしているだけでなく、まるで甲状腺がんを早期発見する必要はないと言っているようだ。

 これが福島県立医大の1教員のキャンペーンではなく、県立医大自身のキャンペーンだということがわかるものを見つけた。この新聞記事をわざわざ英訳して、福島県立医大の放射線医学県民健康管理センターの英語HPに掲載(2016年6月30日 注26)しているのである。受診拒否を勧める記事を海外に発信する意味は何だろうと思っていると、その1か月後に「甲状腺検査見直し議論へ 県民健康調査検討委、対象者縮小も視野」という見出しの記事が『福島民友』(2016年8月8日 注27)に掲載された。通常の30〜50倍の罹患率で、転移率も高く、肺に転移している若年者も複数出ているのに、「『検査を受けること自体が受診者の不利益になり得る』との声が医療関係者から上がっていた」というが、福島県立医大は「早期発見・早期治療」を否定するということだろうか。不可解なのは、既に受診率は70.2%(2016年3月末時点の一次検査受診者 注28)にまで減っており、健康調査検討委員会では受診率の低さを心配する声が多かったのに、受診させない方向に転換しようというのだろうか。

追記:2巡目の検査では「事故当時16歳から18歳の年代の受診率が25%にまで減」っているという(注24)

注1:Tsuda Toshihide et al., “Thyroid Cancer Detection by Ultrasound Among Residents Ages 18 Years and Younger in Fukushima, Japan: 2011-2014”, Epidemiology 27(3), May 2016 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4820668/
暫定版翻訳が以下のサイトから読める。
http://besobernow-yuima.blogspot.jp/2015/10/2011201418.html

注2:伊勢崎馨「平均の20〜50倍!『福島の子供にがん急増』の客観的データが学会で報告されるも政府とメディアが完全黙殺」『LITERA/リテラ』2015.10.18
http://lite-ra.com/2015/10/post-1598_3.html

注3:楊井人文(日本報道検証機構代表・弁護士)「『記者クラブ廃止』『独立機関設立』・・・国連特別報告者が提言 大手メディアはほぼ無視」2016年4月26日
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yanaihitofumi/20160426-00057026/

注4:こどもを放射線障害から守る全国小児科医の集い・実行委員会『明白な甲状腺がん異常多発と健康障害の進行—障害の調査と避難の保障を—(小児科学会・討議資料)』、2016年5月13日 
http://ebm-jp.com/wp-content/uploads/pamphlet-1605-shonikagakkai.pdf

注5:高木昭午・須田桃子「子供甲状腺がんで国際環境疫学会が解明要請」『毎日新聞』2016年3月7日 http://mainichi.jp/articles/20160307/k00/00m/040/100000c

注6:「津田敏秀博士らの論文の方法の誤りを指摘したLetterが「Epidemiology」誌電子版に掲載されました」2016年2月5日、福島県立医科大学ふくしま国際医療科学センター放射線医学県民健康管理センター 
http://fukushima-mimamori.jp/news/2016/02/000248.html

注7:第4回甲状腺検査評価部会(2014年11月11日開催)資料3「手術適応症例について」
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/90997.pdf

注8:鈴木眞一「手術の適応症例について」2015年8月31日
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/129308.pdf

注9:津田敏秀「甲状腺がんデータの分析結果—2016年6月6日第23回福島県「県民健康調査」検討委員会発表より—」『科学』Vol.86, No.8, Aug. 2016, pp.0797-0805.

注10:R. Ando “Reclaiming Our Lives in the Wake of a Nuclear Plant Accident”, Clinical Oncology, Vol. 28, Issue 4, pp.275-276, April 2016.
http://www.clinicaloncologyonline.net/article/S0936-6555(16)00007-8/abstract
安東氏のETHOS IN FUKUSHIMAでも紹介している。
http://ethos-fukushima.blogspot.jp/2016/02/clinical-oncology.html

注11:Takamura, Noboru “Re: Thyroid Cancer Among Young People in Fukushima”, Epidemiology, vol.27, issue 3, May 2016
http://journals.lww.com/epidem/Citation/2016/05000/Re___Thyroid_Cancer_Among_Young_People_in.31.aspx

注12:Shunichi Yamashita “Adolescent Thyroid Cancer After the Fukushima Nuclear Power Plant Accident: Mass Screening Effect or a Real Increase?”, May 26, 2016
https://am.asco.org/adolescent-thyroid-cancer-after-fukushima-nuclear-power-plant-accident-mass-screening-effect-or-real

注13:Ochi S, Kato S, Tsubokura M, Leppold C, Kami M, Shibuya K “Voice from Fukushima: responsibility of epidmiologists to avoid irrational stigmatization on children in Fukushima”, Thyroid, 2016 Jul 18 [epidmiologistsはepidemiologistsの間違い]
http://online.liebertpub.com/doi/abs/10.1089/thy.2016.0120?journalCode=thy

注14:Noboru Takamura et al. “Radiation and risk of thyroid cancer: Fukushima and Chernobyl”, The Lancet: Diabetes and Endocrinology, Vol.4, August 2016
http://thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587(16)30112-7/fulltext
この論文の「和訳と考察」が以下のブログに掲載されている。
http://fukushimavoice2.blogspot.jp

注15:牧野淳一郎「3.11以後の科学リテラシー no.45」『科学』Vol.86, No.8, Aug. 2016, pp.0806-0809.

注16:『福島県放射線健康リスク管理アドバイザー山下俊一先生が答える 放射線Q&A』福島県立医科大学災害対策本部、2011年5月
https://www.fmu.ac.jp/univ/shinsai_ver/pdf/faq_230501.pdf

注17:「基調講演(1)健康への影響のとらえ方・・・国際医療福祉大学教授・鈴木元さん」『ヨミドクター YOMIURI ONLINE』2011年11月28日(本サイト4—1で紹介した時点から、URLが下記に移動)
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20111128-OYTEW59238/

注18:Kotaro Ozasa et al., “Studies of the Mortality of Atomic Bomb Survivors, Report 14, 1950-2003: An Overview of Cancer and Noncancer Diseases”, Radiation Research 177, 229-243 (2012),
http://www.rerf.jp/library/rr_e/rr1104.pdf 

注19:小笹晃太郎他「放影研報告書 RR4-11 原爆被爆者の死亡率に関する研究 第14報 1950-2003年:がんおよびがん以外の疾患の概要 Studies of the Mortality of Atomic Bomb Survivors, Report 14, 1950-2003: An Overview of Cancer and Noncancer Diseases」
http://www.rerf.or.jp/library/rr/rr1104.pdf

注20:武田邦彦「被爆と健康:決定版!!・・・広島・長崎の被爆論文がでました」BLOGOS, 2012年4月30日 
http://blogos.com/article/37947/

注21:茨城県保健福祉部保健予防課「県民の声 福島第一原発による子供の健康調査について」「ご意見」2012年6月24日、「県からの回答」2012年7月11日
https://kouchou.pref.ibaraki.jp/kotyo/hp_iken_syousai.php?vUKE_NO=01240392&searchMode=&bucd=&kategoricd=&kategoriSyouCd=&txtSearch=

注22:「Radiation Research掲載論文『原爆被爆者の死亡率に関する研究、第14報、1950-2003、がんおよび非がん疾患の概要』」2013年6月10日改訂
http://www.rerf.or.jp/news/pdf/lss14.pdf

注23:「『100ミリ以下はがん増えない』誤り〜専門家会議で一致」2013年12月21日、OurPlanet-TV, http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1706 本サイト6—14—3でも紹介したが、再度紹介する。同じ専門家会議の傍聴記を記した「ママレボ通信:放射線の健康影響に関する専門家意見交換会〜第3回“甲状腺を考える”傍聴レポート〜」も参照してほしい。
http://momsrevo.blogspot.jp/2014/01/3.html

注24:白石草「『過剰診断』論の背後で何が起きているのか?—甲状腺がんの再発予後と治療」『科学』Vol.86, No.8, Aug. 2016, pp.0783-0789.

注25:「甲状腺検査の在り方は『受けない意思も尊重』」『福島民友』2016年6月15日
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20160615-084349.php

注26:” Article of the Fukushima Minyu Shimbun 【Wednesday June 15, 2016】
http://fmu-global.jp/2016/06/30/article-of-the-fukushima-minyu-shimbun%E3%80%80【wednesday-june-15-2016】/

注27:「甲状腺検査見直し議論へ 県民健康調査検討委、対象者縮小も視野」『福島民友』2016年8月8日 
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20160808-098813.php

注28:福島県ホームページ「県民健康調査の概要」「甲状腺検査」掲載日2016年6月15日
http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/43-7.html

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