6-12 原発通常運転の放射線モニタリング、医療被ばくのモニタリングは何のため?

モニタリングは適切に行われていると主張する原子力規制委員会に対し、マンモグラフィーで受ける被曝量は驚異的な高線量という指摘、このセミナー開催前に、GEのエンジニア3人が原発の危険性をアメリカ議会で証言したことが指摘されます。


モーガン:私自身が国立研究所で働いた経験から、そこの被雇用者の安全と健康に対するケアとモニタリングは適切だという印象を持っています。ただ、原子力委員会、現在は原子力規制委員会ですが、この所管する施設では基準に合わない、私に言わせれば最低の基準にも合わない所もあると思います。

 たとえば、先週の審理の時のことを考えると、カー=マックギー・シマロンのオクラホマ原発[6—9の訳注2を参照]についてですが、彼らは放射線安全確保の規則をすべて破っていると強い憤りを感じます。ニューヨーク州の化学処理工場、ウェストバレィ工場[訳注]についても同じです。原子力発電所でさえも、中には、労働者の安全に責任を持つ十分な資格を備えた職員のいる理想的な保健物理組織に近いものを持っていない所があると思います。

 しかしながら、原子力委員会と原子力規制委員会、エネルギー研究開発庁は、他の産業に比べたら、放射線リスクに絶えず注意している点で、素晴らしい仕事をしていると思います。唯一、希望を述べるとしたら、化石燃料の発電所が、硫黄酸化物、窒素、炭化水素、その他の障害物に関して、同様にもう少しいい仕事をしてくれたらと思います。

 原子力規制委員会の管轄施設で、改善の余地のある所はあると指摘したいと思います。

マットソン:モーガン博士、その点で述べたいと思います。モニタリング施設、どの環境データを採用すべきかという特定も、また、どの絶対被ばく(absolute exposures)データがモニターされ、追跡されたかなどについての過去の記録は、このシステムに弱点があるということを証明しています。

この点で、最近の変化について注意喚起したいのですが、原子力規制委員会の規則と規制ガイドの中で、これらの問題点について述べています。ですから、ごく最近の情報を考慮して、モーガン博士には特に見解の再考をお願いしたいと思います。

モーガン:あなたが何をおっしゃりたいのかよくわかりません。私が述べたオクラホマの工場は稼働していませんが、あそこが稼働すべきではないと原子力規制委員会が決定するまで長期間かかったようです。

マットソン:私はもっと一般的なモニタリングのガイダンスについて言ったのです。カー=マックギーの施設について言ったのではありません。私が間違って言ったのなら、すみません。

モーガン:わかりました。放射線リスクについて私が述べた時、化学産業界やその他の環境問題と比べると、原子力規制委員会はいい仕事をしているとほめるつもりで言ったのです。

 あなたが要望されたので言いますが、ゴフマン博士とタンプリン博士が数年前に、放射線被ばくの許容量を1桁下げるよう提案した時、あなた方[原子力規制委員会]は上手を行って、2桁も下げたわけですよね。私はもちろん、あなた方にも、あなた方の前任者である原子力委員会にも敬意を表します。ある固定したレベルではなく、できる限り低い(as low as practicable, ALAP)、そして、合理的に達成可能な限り低い(as low as reasonably achievable, ALARA)被ばく量を承認したことは評価しますが、それでも、まだ改善するために監督強化しなければいけない施設があること、世間の目に映る原子力規制委員会のイメージは改善の余地があることを指摘したい。

ブロス:市民に対して、モニタリングに安心感を与える声明がたびたび出されていると思います。もしこの声明が本当なら、広義に解釈されたり、狭義に解釈されたりできるのです。モニタリングに関する声明はモニタリングのプロセスで起こる物理の質に限られています。しかし、もしモニタリングが何かいいことをしているというなら、それは死亡率に影響し、市民を守ることをしている筈です。

 モニタリング・システムは書類の上でよく見えるかもしれませんが、実際には、有意義なことはないかもしれません。モニタリングの詳細を見るたびに、ショックを受けます。前にお話ししたマンモグラフィーに関して、マンモグラフィーを受ける女性たちに実際に何が起きているか検証する努力がされています。その線量は300ミリレム(3mSv)からその100倍にわたっています。これは驚異的な範囲です。

 書類の上の実績とか、モニタリングの構造とかの点では、モニタリング・システムは適切と受け取られているかもしれませんが、実際の現場でその役目を果たし、現場を守ることをしなければならないと思います。私が考える本当の問題というのはこの点です。

カルディコット:前に述べたように、2020年にはこの国の高速道路に10万のプルトニウム輸送が存在することを考えたら、モニタリングが適切に行われるか、どうやって保証できるのでしょうか。

 もし事故が起こったら、誰がモニターするのでしょうか。被ばくした人はどうなるのでしょうか。プルトニウムは風などに乗って、どこに拡散されていくのでしょうか。この放出されたプルトニウムに何千年も被ばくする人たちはどうなるのでしょうか。これが1点目の質問です。

 2番目の質問は、最近カリフォルニアの原子力産業を辞職したGE(ゼネラルエレクトリック)のエンジニア、ハバード、ブライデンボー、マイナーの声明文がここにありますが、彼らによると、原発の設計の欠陥や設計の不備だけで安全性に問題が起こるということです。これはアメリカ中の原発の問題です。

 「たとえば、マークI型の圧力抑制格納(suppression containment)が機能しなくなる可能性があります。しかし、中でも最重要点で、この委員会で私たちが一番強調したい点は、[原子炉]設計の欠陥と、設計不備の影響が重なった場合、原子力発電所の建設と運転そのものが原発事故を起こすというのが、我々の意見です」と言っています(6—13訳者解説)。唯一の問題はいつどこで起こるかです。この人たちは原子力産業界で長年トップにいた人たちでした。こんな時、モニタリングが状況を変えられるのか疑問です。

マットソン:議長、カルディコット博士がおっしゃったのは、議会聴聞会で証言した3人のことですが、つい最近開かれた原子力エネルギー合同委員会で結論が出ています。この委員会の議長が聴聞会を要約した際の言葉そのままは思い出せませんが、議長は片方のストーリーを聞き、規制側からのストーリーも聞いた結果、制御システムは適切に働いていると確信したという主旨のことを言っています。

 これは今日の議論の課題ではありません。GEの3人は今日の議題である低線量放射線については全く述べていません。私たちはモニタリングという狭い課題について話し合っていて、これが低線量放射線に関係するからです。もし私たちが議題から外れて、事故について話し合い、確率の低い出来事があったら我々はどうするかということを話すなら、今日今までに全員が言ったことを最初からすべて修正しなければなりません。私たちが今まで言ったことは意図的に、通常運転と通常行うことに伴う低線量放射線に限ってきたのです。私はこの課題に専念すべきだと思います。

訳注:

ウェストバレィ工場(West Valley)

 ニューヨーク州のウェストバレィに1966〜1975年まで存在した使用済み燃料の再処理工場で、再処理だけでなく、使用済み燃料からウラン、プルトニウム、トリウムを抽出し、再利用することが目的だった。また、種々の放射性廃棄物の処分場でもあった。1975年に稼働が停止されると、高濃度の放射性廃棄物の場となり、その除染作業は2006年にようやく始まったが、連邦政府が資金を出さないため、ニューヨーク州は放射能の危険と共に生きることになった。

 廃炉・施設処分作業は現在も進行中で、エネルギー省の2013年度報告書によると、工場敷地外の線量は環境保護局の限度量年間100ミリレム(1mSv)の0.028%だと述べている。

出典:ニューヨーク州環境保護局(New York State Department of Environmental Conservation)
http://www.dec.ny.gov/chemical/43501.html
連邦政府環境省「ウェストバレィ・デモンストレーション・プロジェクト」
http://www.wv.doe.gov/ASER_Index.html

参考文献
1. Bureau of Radiological Health. Food and Drug Administration. Population Exposures to X-Rays: United States, 1970. Washington, D.C. Govt. Print. Off. Nov. 1973. (FDA-73-8047)

2. Modan, B. et al. Radiation-Induced Head and Neck Tumors. Lancet, v. 50. N. 7852. Feb. 1974: 277-279.

3. Lassiter. Laboratory Management Participation in Long Term Investigation of Man in Occupational Monitoring for Genetic Hazards Workshop. Annals of the New York Academy of Sciences. V. 269. March 1975: 43-45.

4. Hunt, V.R. Occupational Health Problems of Pregnant Women. A Report and Recommendations for the Office of the Secretary of the Department of Health, Education and Welfare. Washington, D.C. Govt. Print. Off. April 30, 1975. (FA-5304-75)

5. Bureau of radiological Health. Food and Drug Administration. Gonad Doses and Genetically Significant Dose from Diagnostic Radiology. United States. 1964-1970. Washington, D.C. Govt. Print. Off. April 1976. (DHEW-FDA-76-8034)

6. Shleien,D.Tucker, T.T. and D.W. Johnson. Mean Active Bone Marrow Dose to the Adult Population of the United States from Diagnostic Radiology. Bureau of Radiological Health, (in progress) [印刷中]

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