過去のものとなった「ラジウム・ダイヤル・ペインター」(時計の針にラジウムで蛍光塗装する労働者)の年間線量と、現在の原発作業員の線量限度が同じだという指摘に対し、高線量でも被害は出ていないという応酬があります。
1976年議会セミナー
5-2 原発・核施設の作業員の被ばく
バックグラウンド放射線の被ばく以外で、要注意の被ばく対象者をあげていきますが、その過程で、核施設の作業員を対象とした疫学調査研究について詳細や問題点が明らかにされていきます。
5-1 放射線基準で特別な注意が必要な人々は誰か?
第5章:特別グループの防護では、放射線許容線量設定に際して、一般公衆以外に特別な注意が必要な人々は誰かという問題です。胎児と妊婦という点で両科学者グループの意見が一致したかに見えましたが、環境保護庁基準局の担当者が異議を唱えました。
4-10 低線量被ばくの最大の影響は免疫システムの低下
スターングラス博士が日本とアメリカの子どもの死亡率を示して、核実験の影響によって、子どもの死亡率が増加していること、免疫力低下による肺炎やインフルエンザの死亡率が、核実験によって上昇したことを示しています。結論として、低線量被ばくの最大の問題は免疫システムの低下だと警鐘を鳴らしています。
4-9 訳者解説:キロラド/キログレイって何?
4—8節でブロス博士ががんの放射線治療に使われる「キロラド」という放射線量の単位について触れていたので、「キロラド」が何に使われるのか調べてみました。現在はキログレイですが、このアメリカ議会セミナーと同時期に、日本でも60キロラド照射されたジャガイモを食べたラットの実験結果が国会で問題にされていました。
4-8 がん治療で使われる高線量放射線の影響と、低線量の慢性的被ばくの違い
マーテル博士は自分の実験から、非常に低い線量を慢性的に被ばくした場合のリスクは、若い人、子どもの方が早く出ること、ブロス博士はがんの放射線治療に使われるキロラドという高レベルと低レベルの放射線被ばくの違いを説明しています。
4-7-2 訳者解説:ホットパーティクル仮説と福島第一原発事故
事故後にICRPの日本委員連名の文書が公開され、ホットパーティクル仮説を全面否定しましたが、42年前に日本の原子力委員会が決定文書として公開している内容は、プルトニウムを吸入した場合、発がんリスクが高いというものでした。2013年には福島由来のセシウムの粒子を世界で初めて映像化した論文が『ネイチャー』のScientific Reportsに公表されましたし、2014年には名古屋で見つかったホットパーティクルも映像化されています。
4-7-1 訳者解説:ホットパーティクル仮説をめぐる論争
4-6でリッチモンド博士が述べた「ホットパーティクル仮説」をめぐる論争について、アメリカ・イギリスの原子力ムラを震撼とさせた論がNPO団体から出されました。現行の放射線許容量が高すぎるから低減せよという請願書でしたが、原子力ムラの慌て方は相当なもので、公聴会も次々と開かれていきました。
4-6 ホットパーティクル仮説の重要性が見落とされている
このセミナーの7年前にコロラド州ロッキー・フラッツ核兵器施設で大規模火災があり、大量のプルトニウムが飛散して、土壌汚染測定をしたマーテル博士にはプルトニウムのホットパーティクル問題が深刻なことがわかっていました。
4-5 低線量無害派が「すべてが嘘だ」と証拠を否定
低線量無害派の専門家たちが、ペトカウ効果も疫学調査結果も「すべてが嘘だ」と感情的な発言をする場面が増えてきました。現行の放射線許容線量を死守しようとするグループと、高すぎるから低減すべきだというグループとの応酬が激しくなってきました。