プルトニウムを扱う作業員が吸入する危険性について、プルトニウムを積んだトラックが国内を行き交う際の危険性など、カルディコット博士が訴えます。マラリアや天然痘より遥かに危険だから、原発や増殖炉を止めるように政府に要望し、市民が拍手して賛同を示します。
1976年議会セミナー
6-6 訳者解説:日本における原発作業員の被ばく線量限度について
2011年3月14日から同年12月16日まで、緊急作業の被ばく限度が100mSvから250mSvに引き上げられました。事故の1.5ヶ月前には放射線審議会基本部会が現行の100mSvを500〜1000mSvに引き上げるべきだという提案を出していました。そして事故が起こり、3月から4月にかけて、この線量限度引き上げの解釈をめぐって経済産業省と厚生労働省の間で攻防がありました。さらに2014年7月末に原子力規制委員会の田中委員長が100mSvを上回る事故を想定して、緊急作業の被ばく線量限度を引き上げる検討をすべきだと提案しました。
6-5 作業員の病気を記録・調査すべき
バーテル博士が現行の規則の不備を追及し、作業員の病気は慢性疾患も晩発性疾患も記録し調査すべきだと主張します。それに対し規制機関の専門家の答えは、法律の報告義務が適用されるのは作業中の事故だけで、病気は放射線との関係が証明されないというものです。
6-4 原子力規制委員会に対する挑戦
日本では、2014年7月開催の「住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」で、事故の4〜5年後に予想される甲状腺がんのアウトブレイク(爆発的集団発生)に備えるべきだという意見が参考人から出ました。それに対し、座長の長瀧重信氏が委員会の結論は「がんは増加しない」という見解だから、そんな予想は困るという趣旨の発言をしました。
6-3 アメリカ原子力規制委員会の権限と業務内容
1970年代中頃のアメリカの原子力規制委員会の業務内容と権限が細かく説明され、日本の規制委員会と比べると、とても興味深いです。特に、原発から放出される放射線レベル、廃液のレベル、作業員の被ばくモニタリングを電力会社に任せるだけでなく、抜き打ち検査をして厳しくチェックすること、原発設置場所の州も独自に第三者機関に依頼して放出放射能レベルを絶えずチェックしていて、3重のチェック機能があることが示されています。
6-2 放射線を使う医師・技術者の知識・資格の問題点と厳しい州政府の規制を告訴する電...
食品医薬品局(FDA)の放射線医学局による医師・技術者への放射線知識の普及と訓練が不十分で、基準が州によって違うことの問題が浮き彫りになります。また、各州が独自の基準を設けているため、原子力委員会=連邦政府の基準より厳しいと電力会社が告訴し、最高裁が州には決定権はない判決を下したことが紹介されます。訳者解説で述べるように、1970年代後半の判決では、連邦政府=原子力委員会は原発をいかに建設し、運転するかを規制し、州は原発が建設されるべきか否かを規制するという方向に変わり、原発の新設廃止を多くの州が採用します。
6-1 行政の責任:アメリカ食品医薬品局(FDA)放射線医学局
第6章は連邦政府と州政府の放射線規制・モニタリング・点検に関する行政の責任担当内容と、それが適正に行われているかについてです。最初にアメリカ食品医薬品局FDAの放射線医学局の担当者が放射線の影響に関する研究プロジェクトについて説明しています。驚くのは、低線量被ばくの危険性を証明する研究を支援していることです。3.11後の日本と大きく違う対応です。
5-6 労働組合の見解—年50mSvは高過ぎる
労働組合の代表が、原発作業員の線量限度が年50mSvは、労働組合の観点から高過ぎるので、45歳以下の作業員は年5mSvにすべきだと主張。訳者解説では、ノーベル医学・生理学賞受賞者が規制委員会の放射線基準担当課長に年10mSv以下にすべきと要望書を提出したことを紹介しています。
5-5 訳者解説:日本のプルトニウム・エコノミー問題
1977年にカーター大統領は日本を含めた世界に向かって核燃料サイクルの中止を訴えました。それに激しく抵抗した原子力先進国のほとんどは、その後、経済的技術的困難さから中止に向かいましたが、日本だけが高速増殖炉もんじゅを続けています。開始以来、事故・トラブル続きの「もんじゅ」、準備停止命令を受けた「もんじゅ」の2014年度維持費に199億円の税金が使われています。
5-4 市民の声:プルトニウム再処理と増殖炉は危険
市民との質疑応答の中で、プルトニウム産業の作業員の被ばく限度(年50mSv)が過剰被ばくだという指摘、作業員の健康調査がなければ、線量測定しても意味はないという指摘、プルトニウム再処理工場と増殖炉が経済的だという論は危険、原発周辺の小規模調査をすべきだという意見が出されました。