次に反論がセイモア・ジャブロン氏から出されました。1976年当時、ジャブロン氏は米国学術研究会議(National Research council)の副会長で、バーテル博士との応酬が続きます。議事録では、他のパネリストはDrと呼ばれていますが、ジャブロン氏はMrと呼ばれています。ジャブロン氏の意見は、それまでの3人の意見と真っ向から対立しています。
1976年議会セミナー
3-1 第3章:低線量の健康への影響とは何か、その影響はいつ現れるのか?
司会役のモーガン博士は「低線量は無害だ」という派の論と、「有害だ」という派の論を紹介しながら、初めての概念「被ばくによって早期老化が起こる」に触れます。これはパネリストの一人、バーテル博士が警鐘を鳴らしている論で、司会役のモーガン博士がバーテル博士の発言を促すかっこうになり、最初の発言者がバーテル博士、次いで同じく低線量は危険だと考えるブロス博士です。
低線量の健康への影響とは何か、その影響はいつ現れるのか?
低線量被ばくの影響について最初に発言する二人、ロザリー・バーテル博士とアーウィン・モーガン博士の経歴を紹介します。
1-3 司会進行役に低線量被ばくの害を訴える専門家を起用
低線量被ばくの定義(線量とその源)について一致した意見はないが、許容線量最高値を放射線防護測定審議会(NCRP)が1971年に決めたので、これが適正かを議論することがセミナーの目的だと、モーガン博士が述べています。会議はモーガン博士が17の議題を紹介するたびに、自分の見解を述べ、パネリスト間の議論に進む形式をとっています。
司会進行役に低線量被ばくの害を訴える専門家を起用:【訳者解説】
会議の司会進行役カール・モーガン博士と、カレン・シルクウッド事件について(訳者解説)
1-2 政府が放射線被ばくをすすめている?
冒頭の挨拶でガリー・ハート民主党議員(Gary Hart: 1936-)が述べていることが、議員主導のこの会議の方向性をある程度示しています:原子力産業が拡大すれば、市民の被ばくも拡大する;原子力産業を進める政府は国民の被ばくを進めている;放射線許容線量は恣意的に決めたもの;人為的に作られる放射線は抑えることができる。
1-1 市民の不安に答えるための議会主催セミナー
この会議の構成と議事録の目次、そしてセミナーを主催した議員の目的(過去30年間大きなテーマだった低線量被ばく問題について原発推進と反対の専門家の議論を議員たちと市民が聞く場を設ける)が述べられています。
【訳者解説】放射線許容線量をめぐる論争の背景
1976年に議会主導の低線量被ばくに関するセミナーが開かれた背景には、1969年にアメリカ上院議会の委員会でジョン・ゴフマン博士が証言し、現行の放射線許容線量は防護ではなく、多くの市民ががんになる惨事に結びつくと述べたことなどがあります。